mixiユーザー(id:6810959)

2024年03月09日23:49

27 view

映画日記『その夜の妻』『長屋紳士録』

一昨日の木曜日は大阪遠征。
小津安二郎監督の未見作3本を見てきた。

2024年3月7日(木)

『その夜の妻』(1930年)
監督:小津安二郎
大阪九条:シネ・ヌーヴォ

サイレント映画。活弁や劇伴なしでの上映。
深夜、丸の内あたりのビジネス街で起きた強盗事件。
犯人は現場からタクシーを使って逃走する。
たどりついたアパートには妻と病に伏せた幼い娘がいた。
そこへ夫が乗ったきたタクシーの運転手が拳銃を手にしてあらわれる・・・・

作品紹介では小津映画では珍しいサスペンスものということだが、終盤は人情劇。
古い映画なので、正直なところピンとこない。
とはいえ、冒頭の夜更けのビル街を警官隊がウロチョロするシーンが、戦前のモダンな「帝都」というイメージで、見ごたえがあった。
犯人一家が住むアパートが洋風だったり、米の名優ウォルター・ヒューストンが出演する映画のポスターが貼ってあったのも、「昭和モダン」っぽい。
犯人役が岡田時彦は岡田茉莉子のお父さん。目もとがそっくり。
親子二代で小津映画に出演していたことになる。


『長屋紳士録』(1947年)
監督:小津安二郎
大阪九条:シネ・ヌーヴォ

貧乏長屋に住む占い師が、街角で捨て子らしい男の子を拾ってきた。
拾ってきたのはいいが、長屋の連中ときたら面倒くさがって誰も面倒をみようとしない。
なんとか、ひとりで暮らしている因業そうなおばちゃんちが、ひと晩という約束で預かることになったのだが、その晩、男の子は盛大にオネショをしてしまい・・・・

大阪遠征の目玉。
落語に出てくるような貧乏長屋を舞台にした人情喜劇。
口やかましいおばちゃんの飯田蝶子をはじめ、ちょっとずるい河村黎吉、お人好しの坂本武、とぼけた笠智衆と芸達者たちが演じる長屋連中のアンサンブルが楽しい。
本作は小津監督が復員後に初めて撮った作品。
敗戦直後なのに、ずいぶんとノンビリした映画だが、ラストで上野の西郷さんの下にたむろする浮浪児たちが出てきて、ギョッとなったところで「終」になる。
この日、午前中に見た『風の中の牝雞(めんどり)』(1948)では、古くさい言い回しになるが「戦争と貞操」を、本作では浮浪児=戦争孤児と、戦争が庶民にもたらした悲劇について、ダイレクトに描いていた。
この2作後の、『晩春』(1949)、『麦秋』(1951)、『東京物語』(1953)あたりには、まだ作品に戦争の影が色濃く残っているが、若い夫婦の危機を描いた『早春』(1956)からは、戦争色がしだいに薄くなっていく。
敗戦から朝鮮特需を経てしだいに復興していく時代でもあったので、当然のことかもしれない。
それだからこそ、『風の中の牝雞』と『長屋紳士録』の2本は、小津監督が前へ進むためには、どうしても撮る必要があったのではと想像した。

酒席で笠智衆が「のぞきカラクリの唄」というのを歌いはじめると、飯田蝶子がいっしょになって「あら、ちょいと」とフリをつけ、河村黎吉や坂本武たちが♪チャチャン、チャンと茶碗を叩いてリズムをとりはじめる。このシーンがほんとうに素晴らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=XK4ccsCI6Wc




5 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2024年03月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

最近の日記