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2022年12月28日23:47

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映画日記『REVOLUTION+1』

今年も残り少なくなってきた。
独居老人の私でさえ慌ただしい気分。
それでもこの1本は年内に見ておきたかった。

2022年12月28日(水)

『REVOLUTION+1』(2022年)
監督:足立正生
駅西・シネマスコーレ

「自分の身体を張って闘えるヤツ、本気で孤立できるヤツ、個的な闘いを個的に闘える奴等、孤立した精鋭こそが世界を換える、世界を創る」

初手から熱っぽいアジテーションの引用になった。
どこからの引用かというと、1972年に若松プロとATGが提携し、若松孝二がメガホンをとった『天使の恍惚』の製作テーマだ。
『天使の恍惚』は地下活動家たちの爆弾闘争を描いた映画だったので、かなり意味合いは違うが、“個的な闘いを個的に闘える奴”というくだりは、本作のモデルとなった安倍晋三元首相銃撃事件の山上徹也に通じるものがある。
かつて足立正生監督は若松プロに所属し、『天使の恍惚』のシナリオにも参加している。
きっかり50年後、若松孝二や足立正生が掲げたテーマが、まったく想定外の形で現実となった。
事件の報に、足立正生は私たち以上に驚き、衝撃を受けたはずだ。
個的な戦いが、政治や思想的な理念でなく、中年男のルサンチマンであったとしてもだ。
ほとんど拙速といっていい状態で、カメラを回し始めたのも、表現者としての抑えきれない衝動によるものだろう。
世間から叩かれるのを覚悟でカメラを回すという、表現者としての気概、その一点のみにおいて足立監督と本作を支持する。

と、ここまでが長い前置き。
で本編を見たのだが・・・・
うーん、やっぱり拙速。
とはいっても、ユニークなシーンもある。
銃撃直前の主人公が、決行するのか、やっぱり止めようかと、いろいろと煩悶する姿を、じっと考え込むのではなく、うろうろ歩いたり、身体を動かしたりすることで表現していた。監督自身の体験が反映してるのかなあとおもった。
終盤の、主人公の妹さんが自転車で坂道を駆けのぼっていく姿を、望遠で撮ったシーンが美しい。
しかし、いちばん肝心なことは、本作を見ることによって、もう一度銃撃事件について考える時間を持てたこと、考えるきっかけになったことだ。
まあ、私ごとき考えてもたいしたことは思い浮かばないが。
とはいえ、帰宅途中の道すがら考えて思いついたことがある。
それは、山上容疑者の半生や銃撃事件の背景に迫るドキュメンタリー映画や、事件を引用した劇映画などは、これからも撮られると想像するが、片や「悲運の政治家」といった筋書きで安倍元首相を顕彰するような映画は絶対に作られないとおもった。
なぜならば、『トラック野郎』の鈴木則文監督も言うように、私が愛する映画とは、弱い者の味方だからだ。



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