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2022年08月01日23:05

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本●『冷えきった街/緋の記憶』

本●『冷えきった街/緋の記憶』(創元推理文庫)
仁木悦子・著

仁木悦子といえば「猫は知っている」、ということぐらいは知っているが彼女の本を読んだことがない。
なんとなく赤川次郎っぽいとおもったから。
といっても赤川次郎の本も読んだことはないのだが。
ということで縁のない作家だろうとおもっていた。
ところが、最近になって二木悦子がハードボイルド小説を書いていたことを知り俄然興味がわいてきた。
ちょうど創元推理文庫で「日本ハードボイルド全集」というのが刊行されていて、その第4巻目が本書だった。

私立探偵・三木潤を主人公とした長編ひとつと短編が5本の構成。
腕っぷしも強くなければ、バーボンがどうたらと酒のウンチクを垂れるわけでもない。
引き受けた仕事の真相を追うために、足と愛車の「ローレル」を使って、1970年代の東京を駆けずりまわる。
小さい子どもに好かれたり、くずれたところがない実直さが魅力だろう。
この手の小説を読んでいると、主人公の探偵がしだいに見知った映画俳優の顔になってくる。
たとえば原りょうが描く探偵・沢崎は藤竜也、大沢在昌の新宿鮫は若い頃の渡哲也といったぐあいだ。
そして本作を読みすすめながら頭に浮かんだ探偵・三木潤は松竹の高橋貞二だった。
まあ、高橋貞二といっても分らないだろうが。

各編とも結末に漂うやるせなさがハードボイルド小説らしい。
とりわけ表題にもなっている短編の「緋の記憶」が「えっ?!」という展開と、ドラマの「コールド・ケース」のような味わいで印象に残った。



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