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2020年03月17日01:40

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映画日記『マノン』

2020年3月16日(月)

『マノン』(1981年)
監督:東陽一
今池・名古屋シネマテーク

元になる「マノン・レスコー」がどんな話なのか知らない。
なんとなく、マノンというコケティッシュな性悪女に、男たちが振りまわされるような話だろうということは想像できる。
マノンにあたる、俳優志望でバニーガールのアルバイトをしながら、男から男へと渡り歩いているヒロイン・みつこを、烏丸せつこが演じた。
小悪魔であったり、ふらふらとしたデラシネだったりと、つかみどころがない女性だ。
1960年代の若尾文子のように、金はもちろんのこと愛も肉欲も、欲しいものは何がなんでも手に入れようとする女性像とは、かなり異なっている。
ふたりの女優を比較するだけで断言するのは性急だろうが、時代が変わりつつあった頃の映画だ。
と、ごちゃごちゃ言うより、烏丸せつこの肉体そのものが「革命」であり、「新時代」だった。肉体、つまり、おっぱいね。

ということで、本作の見どころは第一に烏丸せつこ。
そして、第二が津川雅彦演じる滝沢という中年男だ。
滝沢は街金の社長だ。
金があり、おいしいものや遊びの知識が豊富で、女性の口説き方がスマートなインテリだ。
いっぽう、仕事はきちんとこなし、いざ喧嘩となったら相手が若者でも叩きのめしてしまう腕力を持つ。
いわば世の中年男性なら、誰もが夢見るような「理想の中年男」だ。
このとき、1940年生まれの津川雅彦は41歳。
彼は日活を皮切りに、二枚目俳優としての地位を築き、松竹ヌーバルバーグで60年安保を熱く議論し、東映任侠映画ではドスを振り回すようなやんちゃもした。
津川雅彦が、過去に演じてきた役柄のすべて注ぎ込んで、滝沢という中年男を作りあげている。
彼の出演作をすべて見たわけではないが、私がこれまで見た中では、俳優・津川雅彦のベストだった。

その津川雅彦と若き日の佐藤浩市が、深夜の街金事務所で、パイナップルの缶詰を開けて食べるシーンが出てきた。
じつは、前日に見た『沖縄列島』で、パイナップルの缶詰が重要なエピソードとして登場する。
『沖縄列島』では、少年院の運動場を少年たちが走るという、のちの『サード』(1978年)を想起させるシーンも出てくる。
いずれも、偶然ではないような気がした。


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