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2015年11月20日19:30

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種子散布者としてのハト類

ハト類といえば、強力な砂嚢で、タネをすりつぶして消化してしまうイメージが強い。温帯域には、種子食のハト類が多いが、熱帯域を中心に果実食のハト類もいる。種子食のハトと、果実食のハトでは、腸の長さにも違いがあるそうで、砂嚢のパワーにも違いがありそう。というのも、

上田・野間(1999)In「種子散布 助けあいの進化論I」

には、「キジ科とハト科の鳥による散布の可能性」という節があって、そこでは、「カラスバトがねぐらにした木の下には、カラスバトの糞に混じって、たくさんのタブノキなどの種子が健全な形で落ちていることがある」という経験に基づいて「カラスバトはドングリのように外側も堅い実を採食した場合は実を砕き、柔らかい液果を扱うときは周りの果肉だけを消化して種子を壊さないのではないか」と考えているらしい。
日本産のいくつかの種子散布者候補のハトについて文献を漁ると、

◆キジバト
八木橋(2001)鳥類による木本種果実の被食が種子発芽に与える影響.北海道大学農学部 演習林研究報告 58:37-59

では、飼育下でキジバトにエゾヤマザクラの果実を与えたが、その糞から生きた種子は1つも出てこなかったことを報告している。

◆カラスバト
柴崎・星(2006)アカガシラカラスバトは種子散布者? Strix 24:171-176

では、アカガシラカラスバトの糞を135個調べた結果、健全なアコウザンショウ、ガジュマル、イヌホオズキの種子を見つけている。少なくとも小さな種子であれば、カラスバトは種子散布者になるらしい。

◆アオバト
持田・谷村・吉沼(2003)北海道張碓海岸で採集されたアオバト Sphenurus sieboldii の消化器官内に見られた植物.森林野生動物研究会誌 29:3-7

では、死体の消化管内容物を調べた結果を示している。そのうと砂嚢からしか種子を見いだしていないので、ちょっとはっきりしないけどサクラの種子散布者として機能している可能性は低いだろうとする一方で、ブドウ類の散布は可能性があるとしている。

◆ズアカアオバト

野間 (1997) 種子散布をめぐる植物と哺乳類の共生関係 屋久島での研究 から . 哺乳類研究13 : 137-147.

などでは、ズアカアオバトが種子散布に貢献するのは当然のように書かれているが、本当にズアカアオバトの糞に無傷の種子が含まれていたかは確認されていない。
仮にズアカアオバトが種子散布に貢献しているとしても、主に食べていた果実は、クロバイ、ヒサカキ、ヤマモモ。種子はさほど大きくない。


ちなみに一般に、キジバトとカラスバトは種子食者、アオバトとズアカアオバトは果実食者とされる。両者についてさくっとまとめると、種子食者は小さい種子なら、種子散布者として機能する可能性はあるが、キジバトでは確認されたことはない。アオバト類は、種子散布者として機能すると信じられているけど、さほど根拠はない。
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