気付き覚書
植村泰一先生のレッスンは、アフターでお茶とお菓子を頂きながらお話するのも貴重な時間だった。
そんな折にご自身の最新の気付きの話などしてくださるので、もうこれもレッスン以上のレッスンだった。
「リサイタルの最中に気が付いたんだよね。お腹なんかじゃないんだよ。」
と仰って鳩尾辺りを指さして、「ここなの」と。
もちろん、お腹は大事だし、むやみに力を籠めるのではなく、既にそのお腹の使い方が出来ているという上での話だけれど、鳩尾とはびっくりだった。
この話は私の中では「謎のスイッチ」と名付けて、未解決案件の引き出しの中に放り込んでおいたもの。
もう一つ、別の日には、こんなことも仰っていた。
これは、2014年だったか、無謀にもバッハのシャコンヌのフルート編曲と演奏に取り組んでいた時のご助言だった。
「ヴァイオリンの表現力というのは素晴らしく、とてつもなく表現の幅も広いし、弦も4本張られていて重音も可能だよね。対してフルートは息を出すだけで、言ってみれば、1本の弦だね。だからむやみに重音を全て拾おうとせず、バッハが何を表現したかったかを考えて、音数を切り捨てることも必要だね。
でも、4本の弦とはいっても、それはみな固定されているものでしょう?フルートは1本の弦であっても、息を使う分、瞬時にその太さや長さ、質を無限に変えられると思わない?ヴァイオリンは4本しかないんだ。ある意味、ヴァイオリンよりも、より繊細な表現が可能なはずなんだよね。それを生かそう!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
息が弦、という発想はそれまで全くなかったし、実際に音が出る仕組みは物理的にも解明されていて、そういうものでもないんだろうけれど、これ以来、私の中では「息は弦」
となっている。
「ピアノもギターもヴァイオリンもみな弦を叩いたり、はじいたり、こすったりして音を出すでしょう?低音は太くて長いし、高音は細くて短いですね。そしてどれも共通しているのは、その弦がピンと張られていることなんですよ。」
「ヴァイオリンは張られた弦に弓をこすりつけて音を出すけれど、フルートはエッジに弦をこすりつけて音を出している感じ?」
とレッスンではよく言っていたのだけれど、ここにきて、ようやく「謎の鳩尾スイッチ」の使い方が閃いた。
様々なことが出来ていて、という前提ではあるけれど、弦を調整するのに使うととてもよい。
お琴の弦を押さえて、音を変化させるように。
腹奥から伸びてエッジまでピンと張られている弦をやや上部の鳩尾付近で押すことで、長さが短くなって、高音域への跳躍とか、とても便利に。
音色、表情の変化にも使える。
「先生、こういうことでしょうか?」と思わず問いかける。
・・鳩尾といえば、甲野善紀先生の鳩尾の柔らかさといったら、もう尋常ではなく、摩訶不思議。
ローマの「真実の口」みたいに、ずぶずぶと手が入っていって、背骨がつかめそうなほどで、昔はよくやらせていただいたものだった。
経験したことのない方は一度、お願いしてみると良いと思う。
ここまでとはいかないものの、柔らかな鳩尾、というのは、何をやるにしても前提条件だろう。
意識的に下腹にしっかり力など籠めると、鳩尾は固まってしまい、横隔膜の動きを阻害するので、それはもうスイッチ云々の話ではないので、まずはそこからやっていくと良いと思う。
ログインしてコメントを確認・投稿する