私が今愛用しているのは5代目の銀のロット。
最初はこの5代目もウンともスンとも言ってくれなかった。
今も、この5代目でも決して満足な演奏が出来ている訳ではないけれど、師匠の初代を吹かせていただいた折のあの全く別物の感覚は忘れがたく、やはり初代は別格、と改めて認識。
以前よりは、初代でも音が出るようにはなってきたこともあり、この先、何年吹けるのか?と思うと、こうしてビンテージフルートとのご縁ができた笛吹としては、やはり欲しいのが初代。
とはいっても、本数も少なく、たまに出てきても改造されているものが殆どだし、良い状態のものは市場に出回る前に、関係者に引き取られてしまうのが常。
もしくはコレクターや投機目的でやたら値段の釣り上がってしまった超高額なもの。
色々な楽器屋さんや、リペアマンの方々にも、とりあえず、もし良い初代が出たら教えて、とお声掛けしていた矢先の出来事でした。
以前、たまたま17000円でルーダルカルテのクーパーモデル(アンダーライセンス)を購入し、お蔭で気付きもあった。車に積み込んだまま、旅に持参できるフルートとして、これも私にとっては愛用のフルートとなりました。
そんなこともあり、チラっとヤフオクをみていたら・・
まさかの、初代ロットが出ていてビックリ・・
洋白で、歌口が銀。
ただし、ボディはバネもはずれ、足部管をとりつける接続部分も穴が開き、といういわば、ジャンクといっても良い状態でした。
その分、値段も手が届く設定。
もし、頭部管がいじられていないのであれば、それだけでもいいかも?
と、連絡をしたところ、直接見せていただけることとなりました。
本当に気の毒なくらいの散々たる状態のフルートでした。
蓋を開けたとたん「助けて!」という声が聴こえた・・ような気がした。
幸いなことに、予想していた通り、頭部管の状態はとても良かった。
ここまでボロボロの楽器というのは、おそらく演奏者が亡くなった後、使われることなく遺族により放置されてしまったものだと思うから、逆に、改造される余地はない。
これは不幸中の幸い。大きな幸いだ! とも思った。
・・これもご縁かも・・
何より、せっかくの初代のこの状態は見るに忍びないものでした。
なんとかしてやりたい、とも思ってしまった。
声も聞こえたし。
ということで、このボロボロ初代は我が家にやってきたのでした。
幸い、なんとかしてくれそうな職人さんも知っている。
早速Aさんに連絡したところ、蛇の道は蛇、既にこの初代のことはご存じで、
「え!?あのヤバイ初代、買っちゃったの?!」と驚かれるも、
「時間をくれれば、なんとかしましょう!」
という心強いお返事。
というのも、数年前は私が購入した倍以上の価格で出ていて、いくらなんでも、という感じだったらしい。それが半額以下になって出た直後に、偶然みつけた、ということでした。
言えば、もっと安くなったかもよ、と秋山さん。
でも、まあ、それらも含めてのご縁だと思う。
気持ちの良い取引というのは金額の損得ではないから。
特に魂を預ける楽器の場合は。
ということで、先週の土曜日から我が家に居るこの初代ロット。
1800番代で、師匠のものとも近い製造番号。
1873年製なので、二年だけ私の方が若い。
19世紀の楽器。
もちろん下はボロボロなので使えないのですが、頭部管は本当に良い。
これを吹いてから1911年生まれの5代目マイロットを吹くと、かなり調子が良い。
心身をちゃんと整えないと、鳴らない頭部管。
これに比べると、まだまだ5代目は親切だ、と思える。
本日、修復を引受けてくださった秋山さんの工房に行き、御預けしてきました。
夏のコンヴェンションに出品するご自身の洋白の楽器(これがまた、別の意味、良い意味で無茶苦茶ヤバイ楽器)製作で今は時間がないけれど、それが終わったら取り掛かってくださるそうで、年内には間に合うでしょう、とのこと。
予想していた通り、妙な改造は全くなされていませんでした。
タンポもオリジナルのまま。
なんだか感動。
頭部管のコルクを取り換えてもらったところ、さらに遠鳴りの良い響きとなりました。
修理はまだ先なので、頭部管だけ持ち帰ってきました。
洋白といっても、現代のものとは全く別物。
マイユショール、マイショー?呼び方はまあ、所詮外国語なので、色々ですが、この時代の独特の響きです。
大修復になるので、「初代ロット&秋山フルート」 といった方が良いのかもしれませんが、なんせ、あの頭部管は、本当に初代ならではのものだと思う。
良い修行を積ませてもらえそうで、今から楽しみです。
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