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2018年12月05日23:14

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祈りの曲 第4番 la preghiera (solo)        川崎 優(日1924〜   )

早いものでリサイタルまであとほぼ、一カ月。
そろそろプログラムの原稿を準備しなくては、と曲目解説を書き始めているところです。

いつもは、字数制限もし、見開き2ページに収まるように配慮するのですが、今回は、趣向を変えて、非常に個人的なエピソードも交えつつの「読み物」にしてみようかなと思い、書いていました。

実際に、その「読み物」を配布するか、普通のプログラムにするかどうかは、まだわかりませんが、夫々の楽曲への思いを言葉でも表してまとめておくのは自身の考えを整理整頓するのにも役立つことなので。


このプログラムノートを書き終えた数日後、川崎優先生が2018年11月29日午後2時過ぎにご逝去されたとの知らせを受けました。

追悼として、このプログラムノートをここにも記しておこうと思います。

享年94才。

まだ実感は湧いてまいりませんが、改めて先生の深く大きな、お人柄に、そして受けた御恩の数々に思いを馳せています。

川崎先生、本当にありがとうございました!!

共にいくつものシーンでご一緒させて頂けたことに感謝しております。

謹んでご冥福をお祈りいたします。


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祈りの曲 第4番 la preghiera (solo)        川崎 優(日1924〜   )

音大を出てすぐ先輩の紹介でフルート界の重鎮であり作曲家の川崎優先生が主宰されている『茅笛(かやぶえ)の会』のフルートアンサンブルの一員としてヨーロッパ演奏旅行に参加することとなりました。

既に海外には台湾への演奏旅行で行っていましたが、ヨーロッパは初めて。現地で参加された名手達との共演もあり、地元の方々との交流もあり、充実の素晴らしい旅でした。

異常気象の猛暑の中、小さなイタリアの街の冷房のない会場でカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲を演奏しました。

川崎先生の指揮はほとばしる情熱にあふれ、地元のお客様はみな泣いていらして、演奏している私達も涙をこらえるのが大変でした。

もう40年程前の事です。その後先生が立ち上げられたフルートアンサンブル『ムジカ・フィオーレ』にお声掛けくださって以来、先生の編曲譜によるCD『セレナーデ〜flow〜』をプロデュースしていただいたり、と私のフルート奏者としての歩みは川崎先生との出会いで始まったといっても過言ではありません。

先生には2004年8月にCD発売記念のリサイタルのため『夢想2004 Flowing tune “The Reverie”』という楽曲も創っていただきました。

お父様は日本を代表するオペラ歌手・川崎豊。

背が高くダンディで陽気な先生の挨拶は「やあ!君たち今日も綺麗だね!!」。

ワインとチーズが大好きで、銀座の楽器店での練習が終ると、みんなで一緒に並木通りにあるイタリアンに繰り出したものでした。

先生から動員先の広島で被爆された時のお話をうかがったのは2005年、首に残るケロイド状の傷跡の修復手術を受けた病院にお見舞いにうかがった折でした。

家屋の下敷きになり、這いでたところを近所の人に助けられたこと・・
焼けつくような校庭に寝かされて、麻酔なしで手術を受けたこと・・
亡くなった幼いいとこ達のこと・・

これらのことを公に語る様になれたのは被爆後30年の1975年、『祈りの曲第1番哀悼歌』(吹奏楽作品)を書かれてからとのこと。

この作品は広島市に寄贈され毎年、祈念式典で演奏されています。

その後『祈りの曲第2番悲歌』、『祈りの曲第3番広島の詩』が書かれ2006年、『祈りの曲第4番 la preghiera』が書かれました。

被爆から半世紀経ってからの作品です。以下、川崎優先生ご自身による解説です。



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『私は忘れることのできない被爆体験のもとに原爆犠牲者の方々に捧げる「祈りの曲」を書きつづけることを誓っていますが、「祈りの曲第1番哀悼歌」につづいて第2、第3そしてこの第4をイタリアのビオラ奏者Luca Ranieriの委嘱により作曲しました。

日本のかつての戦乱の時代に苦戦をしつつある意中の人に思いを馳せ敵陣の中で祈りを捧げつつ日本の古謡を歌う舞姫の様子を描きました。

表題の “la preghiera”は英語の“Prayer”です。この曲はビオラ独奏曲として作曲したものを(フルートでも、)アルトフルートでも演奏できるようにしたものです。』(川崎 優 公式HPより)
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「祈りの曲」はその後、『いく星霜すぎるとも』というご自身の詩を伴った第7番まで書かれました。

2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島原発事故で犠牲になった方々に祈りを捧げるための無伴奏コンサートを翌年の9月に開催することを決め、「祈りの曲第4番」を演奏するにあたり川崎先生に御話をうかがう機会をいただきました。

もちろん演奏者や聴き手夫々の印象で良いのですが、という前置きのあと、あの「舞姫」とは吉野で頼朝に捕えられた静御前のことを思い描かれたとうかがいました。

鎌倉に送られ八幡宮で敵の頼朝軍の勝利祈願の舞を、と無理強いされた折、それに屈することなく義経への恋慕の情を歌い舞ったという逸話です。

母方の祖父の生家は古河の光了寺で、真偽はわかりませんが静御前がこの寺に葬られた伝承があり、宝物殿にはその舞衣が収められています。

幼い頃から馴染みのある舞姫の名が語られたことに、この楽曲とのご縁を感じ嬉しく思ったものでした。

このコンサートはその後、アルソ出版社・テンハーツレコードから『白川真理無伴奏フルートの夕べ〜銀のロットと共に〜』として発売されました。

今になって思えば、演奏は拙く、楽曲の読み込みもまだまだ甘いものでした。

しかし帯の解説文で「その演奏会は、まさに『祈り』に満ちた奇跡のようなひと時だった。

音楽だけがそこにあり、自我や欲といった「濁り」がどんどんと消えて結晶化していくようだった。」

とレコード藝術等で執筆されている西村祐氏(フルート奏者・CD評論家)が評してくださっており、確かに真摯な気持ちだけはそこにあったかと思います。

しかし当時の気持ちも、いつの間にかのど元過ぎれば。

世情はきな臭さを増し、天変地異の度重なった2018年ではありましたが、当事者であった2011年当時の真摯さには及ばない。

今回、改めて「祈りの曲第4番」を取り上げるにあたって、自身の心を見つめ直し掘り下げ我欲、雑念を祓う作業が最も必要なこととなりました。

2003年に武術研究者・甲野善紀先生と出会って以来、身体の使い方に変革が起き、赤子が成長していくように演奏技術の進展があり、今も加速しており、それはとても幸せなことです。

しかし2012年の無伴奏コンサートの後、進展に浮かれるあまり、この「真摯な心」はどんどん置き去りにされてきてしまった気もします。

全ての作品も同様ですが、特にこの『祈りの曲第4番 la preghiera』は技術と心の問題、表現する心とコントロールする心のバランスの問題を考えさせられる永遠の課題曲です。





(川崎 優 プロフィール・公式HPより)
東京生まれ
東京音楽学校(現・東京芸術大学)器楽科卒業後フルート奏者として世に出たが、後に
常葉学園大学教授として作曲法、音楽理論、及び演奏法を担当した。
しかし現在は作曲家、指揮者として幅広く活動している。

第11回文部省主催芸術祭にて作曲賞・文部大臣賞及びNHK協会長賞を受賞、
ユネスコ研究員としてフエローシップを受領し、ジュリアード音楽院にてProf. Vincent Persichetti,
その他 Vaclav Nelhybel, Clifton Williams のもとで作曲の研究をした。
その後、数度にわたりスイスのウスター音楽祭に招待されて自作品を発表した。

「第6回ドイツ連邦音楽祭、フライブルグ1986」「神戸フルート作品国際コンクール1987,1991」
「吹奏楽コンテスト、バレンシア1990」「マーチングショウバンド世界選手権大会シドニー1990」
「第8回オリジナル吹奏楽曲国際コンクール、イタリア・コルチアーノ1997」など各国のコンクルの審査委員として招聘された。
また「国際青少年音楽祭於静岡」の音楽監督を初代から十数年務めたが
「モスクワ音楽院・常葉学園短期大学セミナー」特別委員として活動した。
2002年11月9日Florida International University にて開催されたFIU Music Festivalに招待されて
自作品“祈りの曲 第1 哀悼歌”を指揮した。

2004年10月8日にクレモナ弦楽器EXPOからの委嘱による弦楽トリオ
“la improvvisazione”が
RAI イタリア放送協会より放送された。

2007年4月15日にColorado College Packard Hall にて川崎優の作品によるSpecial Concert が開催された。

「第20回国際音楽祭ヤングプラハコンサート」にて2011年9月6日にヴァレンシュタイン宮殿ホールで
String Quartet Primo  がYoung Praha Festival Quartet によって初演された
現在
常葉学園名誉教授、日本現代音楽協会名誉会員、富士市文化振興財団芸術委員,
茅笛の会主宰、ムジカKayabue 音楽監督




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