保育園の園児、ご父兄、職員の皆様対象のクリスマスコンサートでした。
川越の海沼音楽教室での私の古武術奏法の講座に参加された、この保育園の理事長Tさんは、海沼さんのフルートの生徒さん。
なんと昨年から、この企画を温めてくださっていたらしく、一年前から決まっていたコンサートでした。
簡単なレクチャーも含めての演奏ということで、きっとクリスマスの曲や、ジブリやディズニーなんかをやるのかな?と思っていたのですが・・
先月いただいた当日の進行表に「フルートソロ・シャコンヌ」とある。
え?シャコンヌ?保育園児に?大丈夫?と思って確認したところ、ぜひ、とのお申し出。
他にはモーツァルトの魔笛の2重奏や、ルイエのソナタ、となかなか渋いプログラムでした。
もちろん、クリスマスメドレーもたくさん。
園児のみなさんと一緒に演奏した「大きな古時計」も楽しかった。
あとこの保育園で、、園児たちが大切に歌っている、という「大きな木」も私は初めて知ったのですが、素敵な曲でした。本当に天使の声だった。
練習の時に、改めて海沼さんに聞いてみました。
「本当に、シャコンヌでいいんですか?ジブリやディズニーじゃなくて?」
「大丈夫です!小さな子供でも、美しいもの、良いものはちゃんとわかるし、味わえますから。」
と3歳のお子さんを持つ父親としての言葉に励まされる。
自分では、絶対にしない選択だと思います。園児が15分もバッハを聞いてくれるか?飽きてしまうのではないか?ガマンさせるのはかわいそうなんじゃないか?と。
ジブリやディズニーも私は大好きだし、実際、子供たちはとても喜んでくれるので、こうしたコンサートでは演奏するようにしていたし。
まあ、理事長のTさんも、シャコンヌを楽しみにしてくださっているし、大人のお客様もたくさんなので、、とお言葉に甘えて、演奏させていただくことになりました。
都内のとある場所にある保育園。
「昔からやっていらっしゃるんですか?と駅までお迎えにきてくださったTさんにうかがったところ、
「ええ。戦後すぐに、このあたりの地域は、かつては工業地帯が広がっていて夫婦共稼ぎが多かったんですよ。
まだみんな貧しかった時代で、公園でやるせなさそうにして、なんとなくたむろしている子供たちが多かったものだから、そこで、一緒に遊んだりするようになりましてね。
そして、自然発生的に、地域の人達も協力してくれて、この保育園ができたんです。」
とのことでした。良いお話をうかがいました。
さらに、この保育園で心がけていることは子供たちに対して「ダメ」と言わないことなのだそうです。
「ダメ、と言わないで、やってはいけないことを自分で気が付かせるには、大人はどうすればいいか、どう言えばいいか、を考えてください、といつも職員の人には言っているんですよ。
それに、起立、礼、っていうのもやってない。」
さらに
「うちの園の卒業証書には、自分の頭で考えられる人になってください、と書いているんですよ。」
とのこと。
ますます嬉しくなりました。
コンサートはクリスマスメドレーで開始。
特に大人に注意されるわけでもないのに、子供たちはみな、素晴らしい集中力で、聴いてくれていて、びっくり。
「フルート好きになった人?!」ときいたら全員が「ハ〜〜イ!」と元気に手を挙げてくれました。
そして、シャコンヌ。
「この曲は今から300年前にドイツという国の作曲家、バッハによって作られました。」
というと、おそらく園児のお兄さんらしい小学生の男の子が「あ!バッハ?!」
「あ、知ってる?」と聞くとうなずいた。
「じゃあ、みんなで言ってみようか?せ〜の、」で全員で「バッハ!」
「バッハの奥さんが病気で突然亡くなってしまった悲しみの中でこの曲は作られました。
最初のメロディーは、バッハの嘆きであり、何故?という神様への問いかけです。
でも、この曲が素晴らしいのは、嘆いているだけではなく、救いと慰めがあり、最後は感謝で終わっているところです。
15分かかるので、飽きてしまったら、無理にきちんとしていよう、と思わなくても大丈夫ですから、どうぞ、できる範囲で味わってみてくださいね。」
と解説。
演奏が始まる前から、客席の集中力が高まったのを感じ、その波に乗るように吹き始めました。
本当にここが保育園、ということを忘れそうになるくらいの雰囲気でした。
ところが、演奏開始1分後、前列に腰かけていた女の子がお母さんのひざの上で嘔吐してしまいました。おそらく、風邪の症状のようでした。
すぐに職員の先生方が駆け寄り、抱きかかえて医務室に運び、後始末を始めました。
会場も、少しざわつき、みな、どうしよう?といった狼狽した雰囲気が漂う。
演奏を中断して、休憩にし、改めてやった方がいいのかな?と一瞬思いましたが、ここでやめてしまうと、かえって、「大事」になり、そのお子さんも、お母様も辛い思いをされるのでは、と瞬時に判断し、演奏に没頭することに。幸い、命に関わるような深刻な事態ではなかったようなので「些細な出来ごと」ということにする。
こちらが腹を括ってしまえば、あとはバッハの力が会場の空気を換えてくれる。
本当にこんな思いがけないことがあったにも関わらず、子供たちは、最後まで誰一人、騒ぐこともなく、聴き入ってくれていました。
たくさんの拍手をいただきつつご挨拶。
「コンサートでは色々なことがあるけれど、これもまた自然なことですね。最後まで聴いてくださってありがとうございました!」
「途中で、やめようか、どうか、少し迷ったのですが、あれでよかったですか?」と海沼さんや、理事長にうかがったところ、「助かりました。中断すると、あの親子がつらい思いをされますから、とても良い判断だったと思います。」
とのことで、ほっとする。
「それにしても、よく吹き続けられますね。あんなことがあって、集中が途切れる、ということはないですか?」と理事長。
「ああ、このシャコンヌだったからこそ、出来たことかもしれません。毎日写経するつもりで、吹いているライフワークの曲なので。あと、やはり一番大きい理由はバッハの力ですね。」
「うん。やっぱりバッハは凄い。」とお二人。
実際、バッハでなければ、難しかったかもしれません。
びっくりしたのは、冒頭のテーマが途中と最後に出てきたときに、一緒にそのメロディーを覚えて、小さく口ずさんでいるかわいい声が複数聞こえてきたことです。
これには、海沼さんも、理事長も、驚いていらっしゃいました。
こんなに素敵な観客に恵まれて、今年最後の本番を終えることが出来て、本当に幸せです。
ここの園児のみなさんの、自分で考えて、他者のことを思いやれるようになっている、姿、そのように導いていらっしゃる職員、ご父兄、本当に頭が下がる思いで、親としてはダメダメな自分を反省することしきり。
一足早いクリスマスプレゼントをいただいた思いです。
そうそう。海沼さんが、メキメキと変化されているのも、とても嬉しい出来事でした。
5月にご一緒した魔笛、8月に練習したルイエ、どちらも、ぐ〜〜んと、滞りや踏ん張りが減り、清らかに。
私の10年を1年で・・?
ちょっと悔しい気もしますが、こうして、年齢の離れた若い世代の笛吹に、この奏法が受け継がれていく、というのは、これまた嬉しいことです。
若い先生による一生懸命な司会もかわいらしく、初々しかったです。
職員の皆様にもとても良くしていただきました。
そして、理事長Tさんの人間の奥行も凄かった。その上、大のダジャレ好き。
「50歳になった時に、半世紀生きたっていうので、お祝いの会をしたんですよ。半世紀は反省期なんてね。でも、反省はしない。」とのこと。最高です。
皆様、本当にお世話になりました。ありがとうございました!
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