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2017年11月25日22:30

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女房たちの王朝物語論-中将の君(4)

「『源氏物語』には数多くの女房達が登場するが、そのなかでも「中将」と呼ばれている女房は正篇には五人、続篇には三人の計八人で最も多く登場する。」
「正篇に登場する五人の中将の主人は、空蝉・六条御息所・光源氏(後に紫の上に仕える)・朝顔斎院・髭黒の北の方である。そのうち、六条御息所に仕える中将は光源氏に目をかけられ、和歌の贈答があった。光源氏に仕える中将は彼と性的関係を結んでいる者であり、髭黒北の方に仕える中将は髭黒の「召人だちて」(真木柱)とされる存在である。登場回数でいえば圧倒的に光源氏に仕える中将が多く、彼女の登場は葵・須磨・澪標・薄雲・初音・若菜上・幻巻と長期にわたる。他の中将が一巻しか登場しないのに対して、あまりに多い。この光源氏に仕える中将が幾度も存在感を見せることによって、お手つき女房としての「中将」という造形がなされているのである。」

千野裕子『女房たちの王朝物語論』(青土社・2017年)p.83〜84より

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この本を図書館で見かけたとき、タイトルから、王朝物語の「読者」としての「女房」たちのことを論じているのかと思った。読んでみると、読者としてではなく、「登場人物」としての「女房」についての論考だった。

女房たちは、常の脇役である。
王朝物語の中でも、女房たちの言動や心情は、あまり詳しくは描かれない。だから、それを論じるのは中々大変なことだと思う。
今までも「女房」論というものはあったが、その主なものは、女房たちが「いかに軽い存在であったか」について書かれていたと思う。 

しかし著者は、『うつほ物語』『源氏物語』『狭衣物語』などにおける女房の「機能」を丹念に検証することで、「一見するとただ出番が少ないだけの脇役」のように思われる「女房」たちが「ときに物語の展開の動力となり、ときに物語の世界観を示す指標となる存在」である(p.232)ことを論証しようとする。

面白い考察であり、じっくりと読むために再度借りようと思ったが、図書館の本には予約が入ったようなので返さなければならない。税別2200円だから、買おうかなぁと思っている一冊だ。

■中将の君
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