「港はよろこんで救いの手をのばしている。港には慈悲がある。港には安全と憩いと暖炉と温かい毛布と友達と、すべてわれら弱い人間にやさしいものがある。」「だが、陸地なきところにのみ、最高の真理、神のように無辺無限定な真理が在るのだとすれば−−風下
田中西二郎が訳した新潮文庫版の『白鯨』を読んでいる。訳の精度については何とも言えないが、その日本語には、ある種の格調の高さがある。あまりにも格調が高いので、常用漢字以外の漢字や古風な日本語に慣れていない人には薦められないのが残念だが(笑)、僕
「じゃが、何で鯨取りをやりたくなりなすった?」 「捕鯨というものを知りたいんです。世界を知りたいと思っているんです。」 「然らばじゃ、ちょっと走って行って、舳(みよし)の風上のところを覗いてみなさい。覗いたら帰って来て、何が見えたか、言うてみな
メルヴィルの『白鯨』を10年ぶりに読み直し始め、第27章まで来た。全部で135章(とエピローグと語源の部と文献の部)からなる大作の2割ほどのところだ。『白鯨』は、自分の足を奪った白いクジラ「モビィ・ディック」を追うエイハブ船長の物語として知
「これはあきらかに性行為の前段を裏に含んだ描写であり、幻想的な暗喩の奥に、匂いたつような官能美が滲むが、ここは著者[円地文子]ご自身の読み込みによる独自なの人物解釈に添った、大幅な加筆である。原典はかなりそっけないものだ。」「人柄にからめて
「その一つは、臣下たる者が皇后と密通をしてゐること、他の一つは、皇后と臣下との 密通に依つて生まれた子が天皇の位に即いていること、そしてもう一つは、 臣下たる者が太上天皇に准ずる地位に登つてゐること、これである」 谷崎潤一郎「あの頃のこと−−
「松前からも18世紀後半から交易や漁業のために幾度かカラフトに船を出したといわれている(宝暦元年(1751)加藤嘉兵衛、安永2年(1773)村山伝兵衛、同6年(1777)新田隆助)。そして寛政2年(1790)には松前藩が高橋壮四郎(清左衛門
この連休は、用事があってあちこちと移動をしていたけれど、その合間に新潮文庫版の『白鯨』を読んだ。全体の2割強を読んだけれど、面白かった。どのように面白かったかは、いずれ書こう。
前の日記でご紹介した『田辺聖子が語る「落窪物語」』(平凡社・1983年)の口絵。実際の本では見開きではなく、写真の右側の殿方の絵のページをめくると、左側の姫君の絵が出てくる。写真に細工して、あたかも見開きであるようにしてみた。絵は、田辺聖子
「地上の愛は、男女のそれも、友情も、一切が酬いられない。呼びかけられた愛の言葉は、あらぬ方を見る相手の背中に向って空しく消え、たまたまそれを受けとめるとき、人は例外なく傷つかねばならぬ。無邪気で汚れのないことすらが、かえって不孝の因なのであ
「 宮は大そうお苦しくて、はかばかしいものもおっしゃれない。お心の内でお思いつづけになると、前世からの宿縁に恵まれて高い位につき、この世の栄華で並ぶ人もないほどであったが、また心に秘めて、ついに満たされない思いも人には増さっていたこの身であ
先日、サン=テグジュペリの『夜間飛行』(新潮文庫)が、ピース又吉氏によって「愛してやまない20冊!」に選ばれ、書店で平積みされていたことをご報告した。その後、図書館で新規収蔵本のコーナーを見ていたら、サン=テグジュペリの『人間の大地』があった
「 私たちは明治以前の日本を知るため、ひたすら文字を読みます。しかし皮肉なことに、その文字は、近代150年の達成と引き換えに、まったく読めなくなってしまいました。活字にだけ頼る人は、日本のことを、ほんの一部しか知ることができません。 気づきに
「[寛弘四年]三月、花の盛りを迎えた。その頃、毎年藤原氏の氏寺である興福寺から中宮に桜を献ずる習わしがあった。ある年のこと、この桜が献上され、その取り入れ役は紫式部であった。ところが、彼女はその役を新参の伊勢大輔(いせのたいふ)に譲った。そ
「The conservative movement has always been about principles, not personalities. Our nominee should embody those principles. He – or she – must make the case for the cause of conservatism more than the cause of their own celebri
文房具を買うために近所の本屋に行ったら、サン=テグジュペリの『夜間飛行』(新潮文庫)が目立つ場所で平積みにされていた。宮崎駿が表紙の絵を書いていることを除けば、あらためて評価されるということも珍しい本なので「どうしたのだろう」と思ったら、「
桜花とく散りぬともおもほえず人の心ぞ風も吹きあへぬ 【現代語訳】 「桜の花がそんなに早く散るのだとも思われません。人情の変わりやすさは花の散ること以上で、それこそ風の吹き抜ける暇も待たずに心は変わってしまいます。」 【鑑賞批評】 「貫之の人間嫌
Sky pilot, sky pilot,How high can you flyYou'll never never never reach the sky.「スカイ・パイロット、スカイ・パイロットおまえが、どれだけ高く飛べるか知らないがおまえは、けっして、けっして、けっしてあの空に到達することはないだろう」「スカイ
二人だけ この世に残し 死に絶えて しまえばいいと 中島みゆき『予感』所収「この世に二人だけ」より .:*:'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜☆。'・.:*:・.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・ 図書館で中島みゆきのCDを何枚か借りてきた。 初期の中島みゆき
「巴、これまでよくぞ助けてくれた。もうこれまでだ。おれは自害しようと思う。お前は、どこへなりと落ちていけ」 「いえ、わたしの務めは殿を守りとおすこと、死ぬならば一緒と覚悟しています」 「だめだ、最後の戦に女を連れていたと言われたら武士としてそ
「木曾殿は信濃より、巴(ともえ)・款冬(やまぶき)とて、二人の美女を具せられたり。款冬は労(いたは)りあつて、都にとどまりぬ。中にも巴は色白く髪長くして、容顔誠に美麗なり。有難き勁弓精兵、弓矢・打物取つては如何なる鬼にも神にもあふと云ふ一人
今、毎週の発行が待ち遠しいほどに興味を持っているマンガと言えば、かわぐちかいじの「ジパング−深蒼海流」くらいだと思う。ここ1〜2か月ほどは、源平合戦の中の木曽義仲が中心に描かれていた。木曽義仲が「いい男」に描かれていたのも面白かったが、それ
横浜アリーナでのイベント(8月29日)に参加した翌日30日、桜組は四ツ谷でのライブに出演するとのこと。あれだけの大きなイベントの翌日ということで、期待と不安の両方を抱えながら小雨の中、JR市ヶ谷駅から「防衛省正門前」まで歩いて行った。(こん
「電撃的攻撃によって、日本軍は事態を急進展させた。このニュースがわれわれの小グループによって、どんな歓びをもって迎えられたかは想像にかたくない。……サン=テックスの熱狂も人後に落ちなかった。」(アンリ・クローデルの回想)「ニューヨークに戻る
「為信女の兄弟には理明(正五位上・備後守・筑後守)・理方・康延(内供奉)が『尊卑分脈』に挙がっている。その中康延が内裏奉仕の供奉僧で殿上の宿直なども勤めたらしいことは、澪標巻に宿直僧が冷泉帝に出生の秘密を漏らす条も思い合わせられる。」今井源