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2017年07月22日22:16

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まいりすさびて-中将の君(2)

「御方に渡りたまひて、 中将の君といふ、御足など参りすさびて、大殿籠もりぬ。」

源氏物語の「葵」の帖より
http://www.genji-monogatari.net/html/Genji/combined09.3.html#paragraph3.1

源氏の「最後の女」である「中将の君」は、どこから登場したか。
多くの研究家は、この「葵」の帖で源氏の「足をさすったりもませたり」させられた「中将の君」と同一人物であろうことを指摘している。

玉上は「御足など参りすさぶ」という言葉に注目している。(*1)

「足参る」とは、「貴人の足をもませること」で、この言い方は他にも例がある。しかし、「参りすさぶ」という言葉が使われているのは、源氏物語ではここだけなのだそうだ。そして、「すさぶ」には、以下の2つの意味がある。

(1)しきりに……する。
(2)慰みに……する。

玉上は、(2)と取っている。そして、藤本勝義は、玉上の解釈から「足をもむという肉体的接触から、中将の君との肉体関係を想起すべきだ」と書いている。(*2)

このとき、源氏は22歳だった。
そして、「幻」の帖で源氏が中将の君と関係するとき、彼は52歳である。
実に30年にわたる関係であり、この期間の長さは、紫の上をもしのぐ。
何故ならば、最初の関係は、源氏と紫の上の初夜よりも前であり、最後の関係は紫の上の死後だからだ。

中将の君は、物語から察することが可能な限りでは、「源氏と最も関係の長かった女」ということになる。

*1:玉上琢也『源氏物語評釈 第二巻』(角川書店・1965年)p.470。
*2:藤本勝義「召人中将の君」、『源氏物語の鑑賞と基礎知識19御法・幻』(至文堂・2001年)所収

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