今夜、僕は人間を辞める。アルコールに脳髄を沈め、確信犯的に人間性を消し去る。
雄になる。今夜こそ、性別欄の「男性」を二重傍線で消し込み、欄外に「オス」と明記する。今や僕は、がるがると君を求める一匹の獣。
君もメスになれ。獣になれ。肉欲に従うだけの、理性なき動物になれ。そうして二人、いや二匹で。
純粋なまま汚れよう。
清純なまま穢れよう。
夜の町に、響きわたる咆哮に、ばちばちと街灯がチラついた瞬間、二つの頭と八本の手足を持つ、一匹の合成獣が産まれた。僕と君だったはずの人間を原料として。
「人間より獣の方が幾分も純粋だ」
僕らは、新しい体に戸惑いながらも、八本の手足で歩く練習を始める。何度も体勢を入れ替えて。
いつの日か全力疾走できる日が来るだろう。それこそ、草原を駆けるように。
そんな日が来たら、街に飛び出し、ビルを超すほどジャンプして、夜に噛み付いてやろうぜ。
僕らはきっと、それを噛み砕くために産み出されたに違いないのだから。
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