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2019年12月24日19:46

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小野VS大野

 放課後の教室、窓際、怒号が飛び交う。喧嘩?あの小野さんと大野さんが?いつも一緒に登下校する仲良しコンビのはずなのに?

「大野さんには、わからないのよ。私の苦しみが」
「落ち着いてよ小野さん、なんで怒ってるの?」
「態度よ。態度!いつも私のこと馬鹿にして」
「してないわよ」
「私が小野だからって、大野より下なわけじゃないから」
「分かってるよわそんなこと。私、小野さんのことそんなふうに思ったことないよ」
「じゃあなんでさっき『大は小を兼ねる』って言ったの?私に対する当てつけでしょ!」
「そういう意味じゃないわ」
「信じれない!どうせ私のこと小野だからチビなんだって、内心見下してるんでしょ?」
 大野さんの表情が一変する。
「そんなはずないでしょ!私、背が高いのが悩みなんだから!このクラスの男子の誰よりも私の方が背が高いんだよ。名前に大きいっていう字が入っているから余計にコンプレックスなんだから」
「でも胸も大きいじゃない」
「え?」
「私、大野さんの胸を見るたびに自分のと見比べてみじめな気持ちになる。名前に小さいっていう字が入っているから、猶更よ!」
「そんなこと言われても」
「大野さん背が高いから、ちょうど男子の目線に胸がくるし卑怯よ!計算ずくなんでしょ?」
「計算ってなによ?!じゃあ私が高校二年生の男子の平均身長を調べて、ちょうど目線に胸がくるように身長を調整して伸ばしたっていうの?ふざけないで!」

「ちょっと、くだらないことで喧嘩しないほうがいいよ」
 風紀委員の川辺さんが、仲裁に入った。が、二人に――
「『野』じゃない人は口出ししないで!」
 と、よくわからない理由で撃退された。
「とにかく喧嘩はだめよ。ね?」
 山野さんが止めに入った。が――
「『山』?ハッ」
 なぜか鼻で笑われた山野さん、半泣きで教室を出ていく始末。

 クラスの視線が私に集まっている。そうね。多分この場を収めることができるのはきっと私だけね。
 がらっと音を立てて椅子を膝裏で押しやり、勢いよく立ち上がる。
「喧嘩は止めなさい」
 小野大野の両野は、私を見て小声でつぶやいた。

「……中野さん」
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