mixiユーザー(id:2938771)

2021年09月17日16:41

37 view

ドラゴンとギャオス、その2

「噂には聞いていた。宇宙のいろいろな場所にドラゴンという種族がいて、ものすごい力と知識を蓄えているのだ、と。でも、アイさんは、ただ、可愛いって言っていたから、すっかり油断していたんだ」
 洋梨を食べながらギャオスが言うと「甘いなあ、やわらかいなあ」と、それしか言っていなかったドラゴンが、ようやく梨から口を離し、ギャオスのほうを見た。
「アイさん、風鈴買ったのかなあ」
 ドラゴンがそこまで風鈴が好きだとは思えない。
「アイさん、この鈴もくれたんだよ。アイさん優しいんだよ。でも、お前も、すごく、いいヤツだよ。だって、梨、持って来てくれたもんな。しかも、こんなに美味しい梨だもんな」
 どうやらドラゴンは誰かに何かをしてもらうということが嬉しいらしい。彼は、卵から孵って親の顔も、そのぬくもりさえ知らないままに、たった一人で育ったのだ。気の毒と言えば気の毒なヤツなのだ。
「前に地球に来たときには、こんなに、いいヤツは揃ってなかったんだよ。まあ、俺も、あの時は、ほとんど洞窟の奥にいて、そこから出なかったしな。その前のドラゴンの記憶で、出ると追い回されるというのがあったからな。ああ、俺がいない間の地球でも、そんなことがあったらしいな。地球の時間が微妙に歪んでいて分からないんだけど。物語りにはドラゴンスレイヤーの話がずいぶんと残っているみたいだからな」
「地球人ってさあ、わりと見た目で判断するんだよ。凶悪な顔で攻撃されてないの、亀野郎ぐらいだから」
「ああ、知ってるよ。ガメラって言うんだろう。あいつ、顔だけ見たら悪人だよな。でも、ドラゴンは凶悪な顔してないぞ」
「人間ってさあ、地球上で言うと哺乳類好きなんだよ。他はたいてい嫌っていてさ。両生類もわりと嫌われてるんだけど、爬虫類が一番嫌われてるんだよ。たださ。それも、わりといい加減なとこあってさ。俺は地球上ではコウモリに似ているわけよ。だったら哺乳類なんだから、もう少し好かれるはずなのにさ。卵から生まれたってだけで爬虫類扱い、羽根があるから鳥類に入れてくれてもいいのに、爬虫類扱いされたんだよ。卵って言うけど、あれ、正確にはカプセルなんだけどな。そんなの地球の科学じゃ分からないみたいでさ」
「そうなると、あれだな。俺は縮尺間違えて、かえってよかったのかもな」
「間違えたのか、縮尺」
「ああ、その上、戻る方法がないんだよ。お前たちのように人間の姿になることも出来ないみたいなんだよ。あのウルトラマンの科学もドラゴンには及ばないみたいなんだよ。おそらく、生体の物理法則が違っちゃってるんだろうな」
 二人は、宇宙物理法則と地球の物理法則の違いについて話をはじめた。間が抜けているようなギャオスなのに、猫程度の知識しかないように見えるドラゴンなのに、筆者などには皆目分からない話をしはじめたのだ。やっぱり、彼らは宇宙生物なのだなあ、と、筆者は会話の内容が分からないままに、別なところに感心させられていた。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年09月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930