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2024年05月16日14:42

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日陰の達人、闇夜の天才、その19

性具製作者、その3 

 それは奇妙な光景だった。一年中開けることのなそうな天戸の向こう側には子供たちの遊ぶ声が聞こえている。工房の中は昼間から電気が煌々とワイセツ物を照らしている。その中心に全裸の女がいる。筆者が連れて来た三十歳過ぎの元性風俗嬢だった。仕事を辞めてお金に困っている彼女に一日五万円になる仕事を紹介したのだ。仕事は性具のモニターと商品カタログ用の写真撮影だった。
 いくつかのSMの拘束具、そして、バイブレータ、さらにお尻の穴を責めるための、いくつかの開発中の道具が作業用のテーブルに並べられている。モニター用の簡易ベッドが用意されいる。このベッドは普段は畳まれて部屋の隅にあるものだ。
 ベッドサイドには彼の特性のローションも用意されいる。そちらも数種類ある。彼は乾き難いローションも作りたいのだと言っていた。
 彼は作業用の作務衣のようなものを着ているが筆者は全裸だった。それも、彼の望んでいることだった。筆者の文字通りの反応も彼にとっては大切なデータになるのだろう。中には、インサート中の男が気持ち良くなるというローターもあった。それはインサートしなければモニター出来ない。ゆえに、その奇妙な工房で筆者は彼の見つめる中で、そこまでしなければならなかったのだ。
「これ、お尻には向かないと思う。だって、汚れが落ち難い構造になっているでしょ。別に、お尻に入れたいような男に、汚れたのを見られるのが嫌なわけじゃないけど、ちょっと、気分は良くないと思う。性具は清潔に保てるものがいいと思う」
 筆者の連れて行った女は、お金のために仕方なく仕事をするのでもなく、また、このチャンスにと性を楽しむのでもなく、適格にモニターとしての仕事をしていた。そのことを彼は喜んでいた。しかし、それは筆者には楽しいことではなかった。筆者は、モニターであるという特殊な状況で性を享受したかったからだ。
「これ、中で振動の場所を変えられないのかなあ。どこが振動するか分からない、それが女には良いと思うんだけど」
「それは難しい。でも、考えてみます」
 彼は女の意見をきちんとメモしていた。まるで本当に何かを開発する実験室にいるようだった。いや、本当に開発していたのだろう、新しい性具を。たかが性具なのだ。そんなものを真剣に開発する人間がいるのだろうか。いや、筆者の目の前にいたのだ。そして、その男に呼応するように筆者の連れて行った女も、また、真剣にモニターしていたのだ。
「どうしてやれないの。モニターでしょ。これ、男の人のお尻に入れて、それで女が気持ち良いものなんでしょ。入れてよ」
 筆者はお尻だけは苦手だった。何度か挑戦はしたのだが、痛いし不快なものはどうしようもないのだ。女は筆者がそれを執拗なまでに拒むことで不機嫌になってしまった。本気で怒っていたのだ。見かねた男が、それでは自分がやるということになった。その時、筆者は初めて男の全裸を見ることになった。見られたことは何度もあったが、見るのは初めてだったのだ。
「ボクの小さいから、ごめんなさい」
「小さい方がいいんじゃないの。だって、小さいからこそ、こういうものを利用して女を感じさせたいって思うんでしょ」
 その通りなのだろうが、それを女が言っていることが面白かった。そして、その男のそれは、なるほど小さかった。筆者も小さいことでは自信があったのだが、それよりも、男のそれは、さらに小さかった。しかし、男の開発していた性具は優れていた。どうやら、低周波か何かを利用しているらしく、男の尻の中でピクンっと電気が流れ、その度に、男のそれが女の中でピクンっと反応するらしいのだ。確かに女も反応している。低周波治療器を利用しているのだろう。そのスイッチは男ではなく、筆者が持つことも出来た。つまり、男でも、女でもなく、筆者の意思で男のそれを反応させることが出来るという性具だったのだ。筆者は、これは二人を支配している筆者が一番楽しいのではないか、と、そんなことを考えながら、スイッチを入れたり切ったりして楽しんだ。
 この商品、筆者は気に入ったのだが、発売された様子はなかった。価格が折り合わなかったのかもしれない。しかし、そんなものを考える彼は、やはり、天才だと筆者は思った。
 モニターとして紹介した女は、結果として、男と個人的に仕事をし、ついには男と結婚することになった。面白いものだ。

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