mixiユーザー(id:2938771)

2021年08月31日14:49

59 view

ドラゴンは間違えた、その5

「面倒だから止めなかったけど、お前、さっきから何してるんだよ」
 筆者は仰向けに寝転んだドラゴンの腹を撫でていた。
「いや、こうされるの好きかな、と、思って」
「だからそれは猫で、俺はドラゴンだから。ドラゴンは果てしない時間を一人で過ごすんだぞ。撫でられて喜ぶような環境にいないんだよ」
「え、だって、星に帰れば、そこはドラゴンの街なんだろう。ドラゴン学校があって、ドラゴンスーパーもあって、ドラゴン病院とか、ドラゴン警察署とかがあるんだろう」
「地球人ってさあ、自分の小さな知識を応用してしかものを考えないみたいだよな。自分の好きなものは他の人も好きで、自分の嫌いなものは他の人も嫌いで、自分が正しいと思ったものは他の人も正しいと思うはずだ、と、そう考えるみたいだな。ドラゴンは、地球の時間感覚では想像出来ないほど長い時間を生きるんだよ。地球でいうなら植物に近いのかな。でも、それだって単位は小さいわけだ。ああ、地球でも神というのはそうした生命のようだな」
 それでも、お腹を撫でられたドラゴンは、目を閉じてゴロゴロと喉を鳴らしていたのだ。
「でも、それと一人というのは無関係だろう」
「単純に考えてもみろ。もし、地球人の寿命が千年だったらどうなるよ。人口爆発で人類は滅びるだろう。寿命が長いということは、個体数は少ないということなんだよ。しかも、ドラゴンは卵で生まれる。俺たちは、親の顔も知らず、それこそ、数万年という単位で一人で育つわけよ。ただ、記憶は継続されているからな。一人って感覚も違うんだけどな。まあ、いずれにしても、ドラゴンとドラゴンが慣れ合うなんてことはないんだよ」
「じゃあ、どうやって種を保存しているんだよ。いくら寿命が長くたって何かしなけりゃ種は残せないじゃないか」
「お前はスケベオヤジか」
 ドラゴンの学習能力は恐ろしい。スケベオヤジなんて言葉をすでに使いこなせるようになっているらしいのだ。それにしても、そんなことに意味などないと言いながら、お腹を撫でる筆者の手から逃れようとしないのは、どうしたことなのだろうか。
「まあ、でも、これも悪くないな、と、そう思っているじゃないか」
「確かに悪くない」
 ドラゴン、やっぱり素直で可愛い。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年08月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031