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2020年03月19日01:02

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ギャオスは何を選ぶのか、その11

「そうだよな。ようするに、俺が‎星に帰らないためには、どうすればいいか、その相談だもんな」
「お前が星に帰るのかどうか、その相談じゃなかったかな」
「帰らないよ。だってよお。お前たち、俺が帰ったら、もう、ずっと俺の悪口言い続けるだろう」
「いや、褒め続けるよ。ギャオスはいいヤツだったってさ」
「それ、戦争映画で死んだヤツに向けられる定番のセリフだろうが。だから俺は帰れないんだよ。いや、本当は、ただ、帰りたくない。王様が嫌だからじゃない。俺は地球で育ったから地球で死にたいんだよ」
「地球孵り地球育ち地球死亡だな。でも、そのためには、化けて出る必要があるぞ。ギャオスの幽霊、見たくないなあ。ある意味、お前たちって、生きていればこその迫力だからなあ」
「帰りたくないなあ。俺は、星に帰ったら、たとえ王様になっても、もう、誰も俺を個人として認めてくれなくなるんだよ。ギャオスってさあ、たとえ先頭を飛んでも集団の一つでしかないからなあ。でも、地球にいれば、俺はただ一人の唯一の俺でいられるんだよなあ」
 ただ一人の唯一とは、何だかギャオスの悲しさを象徴した言葉である。先頭を飛んでも集団の中の一人でしかない、それが嫌だ、と、その考えには共感出来る。山に登る、ものすごい登山家はものすごい速さで頂上に達するかもしれない。しかし、そこで観る景色は一番最後に頂上に達した人と変わるものでもないのだ。頂上は頂上なのだ。だから、登山家は次の山を目指すのだ。火星の山に登ろうとする登山家たちさえいるぐらいなのだ。
 どんなに優秀でも、集団の中の一人でしかない。それは安心であると同時に怖いことでもある。全員が崖から落ちる可能性があるのだから。
「俺は俺の星の嫌われ者になりたいんだよ。でも、王様は嫌われ者じゃダメなんだよ。じゃあ、俺が皆に愛される王様になったとして、誰が嫌われ者をやるんだよ。今、俺の星じゃあ、けっこうウルトラマンは人気なんだよ。だから俺が悪く言うんだよ。ウルトラマンより俺のほうが俺の星で嫌われるかもしれない、でも、それでいいんだよ。もし、本当にウルトラマンが陰謀を企んでいたら、全員がそれに陥るということがなくなるからな」
「じゃあ、お前、本当はウルトラマンには陰謀はないと思っているってわけだな」
「ここだけの秘密の話だけどな。だって、本気を出して闘ったら、ウルトラマンとか大した強さじゃないんだぜ。俺が一番強いのなんて、もう、あいつらも分かっていることなんだぜ。俺がいるのに陰謀なんて無理だよ。無理、無理」
 本当だろうか。いや、本当かどうかはどうでもいいのだ。どうせ、彼らは本気で闘う気などなく、ケンカを楽しんでいるだけなのだろうから。
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