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2020年08月02日07:41

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追悼、アラン・パーカー

 アラン・パーカー氏が亡くなった。
 映画に心奪われたのは中学二年で『がんばれベアーズ』を観たときである。映画熱は高校生になるころにはトップギアに入っていた。
 そのころに夢中になった映画人の一人がアラン・パーカーだった。

 最初に観たのは『小さな恋のメロディ』。規律にうるさい小学校が舞台で、子供たちが厳格な教師に抵抗する物語はじつに痛快だった。そして子供たちだけで勝手に結婚式を挙げたマーク・レスターとトレーシー・ハイドがトロッコをこいで“新婚旅行”に旅立つラストにはあこがれさえ抱いた。アラン・パーカーはこの映画の脚本を書いた。


『ダウンタウン物語』。
 禁酒法時代の二つのギャング団の抗争を描いたミュージカル。これだけ書くと特に珍しくもない設定だが、なんとキャスト全員が子供なのである(当時14歳のジョディ・フォスターがキャバレーの歌姫を演じている)。だからまったくの抗争劇で登場人物も全員1920年代のオールド・ファッションに身を固めているに、マシンガンから発射されるのはパイだったりする。ラストの全員でのパイ投げ合戦では撮影であることを忘れて本当に楽しんでいる彼らのあどけない表情が見える。映画っていいなと心から思った。アラン・パーカー初監督作品である。


『ミッドナイト・エクスプレス』。
 アメリカ人旅行者ビリーがトルコで麻薬所持・密輸の罪で逮捕される。四年の投獄を宣告されるが、三年後に裁判のやり直しで三十年に伸びてしまう。希望を失ったビリーは脱獄を決意する。ミッドナイト・エクスプレス―深夜特急とは「脱獄」の隠語である。
 とても淡々と進行していくあたりはドキュメンタリーのようだ。その緊迫感は最初から最後まで貫かれ、そして最後に解放される。鳥肌が立ったのを覚えている。
 トルコがかなりいかがわしく描かれていて今では絶対に作られないタイプの作品である。じっさい、公開前にトルコは上映禁止にしようと躍起になったらしい。しかし結局公開され、あろうことかオリバー・ストーンがかなり勝手に脚色した脚本がアカデミー賞を受賞してしまう。
 そういう危なっかしい事情は置いといて、インパクトの強さという点において衝撃の映画だった。


 他にも、1964年に起きた公民権運動家三人が殺害された事件を描いた『ミシシッピー・ バーニング』という名作もある。ぼくにとってアラン・パーカーは、映画に目覚めたばかりのころに「ほら、映画ってこんなに可能性に満ちたものだよ」と微笑んでくれた恩人である。
 享年七十六歳。深く深く冥福を祈る。

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