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2023年10月29日16:17

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国際シンポジウム「世界とつながる日本文学 ~after murakami~」に参加

 抽選に当たったので早稲田大学国際会議場(井深大記念ホール)で開催される「国際シンポジウム『世界とつながる日本文学 ~after murakami~』」に参加できることになった。『1Q84』のTシャツを着て、池袋駅から軽やかに徒歩で向かった(約40分)。
 オープニング、第1セッション、第2セッションという流れで、10時30分から17時までみっちりプログラムされれていた(途中、13時から14時30分まで昼休憩)。
 一カ月ほど前にこのイベントを知ったとき、是非とも参加したいと思ったのは、登壇者のすばらしさである。

・オープニング:ジェイ・ルービン(ハーバード大学名誉教授)
・第1セッション:「新しい世代の作家にとっての日本文学」
 登壇作家:アンナ・ツィマ、呉明益、柴崎友香、チョン・イヒョン、ブライアン・ワシントン
 モデレーター:柴田元幸
・第2セッション:「表現者にとっての日本文学」
 登壇アーティスト:アミール・クリガー、インバル・ピント、チップ・キッド、ピエール・フォルデス
 モデレーター:岡室美奈子

 以上の登壇者のうち、「いつかこの人のお話を生で聴いてみたい」と切に願っていた方が二人いる。ジェイ・ルービンとチップ・キッドである。
 ジェイ・ルービンはハーバード大学名誉教授で、『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などの翻訳を手がけている。チップ・キッドは村上春樹作品の米国版すべての装丁を手がけている、伝説的なブックデザイナーである。
 この二人に加え、来月上演される『ねじまき鳥クロニクル』の演出・脚本を担当したアミール・クリガー、同作をアミール・クリガーと共に演出し、振付もおこなったインバル・ピント、さらに来夏に劇場公開されるアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』の監督であるピエール・フォルデスの話も聞ける。こんなチャンスは二度とないだろう。
 席は自由席ではなく予め割り振られていた。いい席が当たりますようにと願っていたら、前から三列目のほぼ中央。やったぜベイビー! ちなみに一列目は登壇者たち、二列目は関係者の方たちだった。
 イヤホンも用意されていて、同時通訳があった。さすが国際的イベント。

 オープニングのジェイ・ルービンの基調講演は話の内容としてはとくに興味深くはなかった。2006年に開催された前回の国際シンポジウム「春樹をめぐる冒険ー世界は村上文学をどう読むか」のときの様子や成果の話だった。だがすぐ目の前で語っているジェイ・ルービンの姿を見られて満足できた。
 続いて第1セッション。テーマは「新しい世代の作家にとっての日本文学」である。プログラムには「村上春樹作品や日本文学に影響を受けた作家をお招きし、ご自身の読書体験や執筆活動についてお話しいただきます」と書かれていた。
 モデレーターの柴田元幸の進行で各作家が語ったのだが、こちらもぼくにはグッとくる話がなかった。唯一、なるほどなと思えたのはアンナ・ツィマの以下の話。
「初めて日本に来たとき、村上作品に出てくる街を期待を持って歩いたけどイメージどおりではなかった。それで理解した。自分は文学上の表現に憧れていただけなのだと」
 そんな意味のことを言っていた。

 昼の休憩のとき、せっかく早稲田に来ているのだからと、村上春樹ライブラリーも訪問し(七度目)、オレンジキャットでドーナツも食べ、オーディオルームにも寄った。かかっていたのはナット・キング・コールの『アフター・ミッドナイト』。

 第2セッション。
 最初に登壇したのはアミール・クリガー、インバル・ピント。お二人ともイスラエル人である。『ねじまき鳥クロニクル』で描かれている暴力と現在のイスラエルの状況を重ね合わせた話に言及するかと思ったが、ほんの少しだけ触れただけにとどめていた。
 続いてプログラムにも記されていなかった、舞台『ねじまき鳥クロニクル』の実際の役者二人による一場面のパフォーマンスがあった。
 次はお待ちかねのチップ・キッド。スクリーンに映像を映しながら、生い立ちや経歴、じっさいに手がけた村上作品のブックカバーの完成までの経緯なんかをユーモアを交えて語った。具体的には『象の消滅』『スプートニクの恋人』『ねじまき鳥クロニクル』『めくらやなぎと眠る女』『アフターダーク』『海辺のカフカ』『1Q84』『ふしぎな図書館』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』である。
 次はピエール・フォルデス。いろいろ語っていたが、こちらもグッとくるものはなかった。話のあとにアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』の10分程度の特別編集版が上映され、それを観られたのが救いだった。
 それから四人によるシンポジウムに入った。テーマは「表現者にとっての日本文学」である。プログラムには「村上春樹作品が文学以外の芸術分野でどのように受容されているのか、どのようなインスピレーションを与えているのか、さまざまな分野の表現者にお話しいただきます」と書かれていたが、正直言って、どの方のどの話もなんだかピンとこなかった。まあ、ぼくの見識がないせいなのだろう。
 結局、ぼくにとってはジェイ・ルービンを見られたこと、アンナ・ツィマの発言に感心したこと、チップ・キッドの話、舞台『ねじまき鳥クロニクル』と映画『めくらやなぎと眠る女』の一部を観られたことだけが収穫だった。登壇者の豪華さを考えると首をひねってしまうが、五つも収穫があったことは大きな喜びである。
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