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2018年11月14日11:14

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短編『話にならない』

『話にならない』

 私はティッシュを取り、鼻をかんだつもりだったのだが、おかしなことに、自分をかんでしまったようで、私はティッシュの中に排出され、しかも厳重に、もう一枚(正確には二枚一組)追加して包まれ屑かごに捨てられてしまった。白い世界にたった一人、身動きが出来ない訳ではないが、私が必要とされない存在というより、それを遥かに超えて、穢れた物として扱われたことにとてもショックを受けてしまった。この先、行き着くところは火葬ということでは同じなのだが、今はまさに、凶悪殺人犯の汚名を着せられ、裁判も発言権もなく、また、知人の誰にも知られることなくいずれ死刑が執行されるのと同じなのである。これまでに、かんだ鼻として捨てられた人間が居ただろうか。私が火葬されるまでの間に、やはり誰にも知られないとしたら、あるいはそんな人も長いティッシュペーパーの歴史の中ではいたのかもしれないが、非常に悔しい。非常に泣けてくる話だが、この世の中の誰にも知られることはないのだから、全くお話にならないのだった。


【企画】短編と詩『さみしさ』
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