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日記一覧

曽根正人『空海』
2021年12月21日16:53

 曽根正人『空海 日本密教を改革した遍歴行者』(山川出版社、2012年)を読了。空海が生まれた時代、日本の仏教は古代東アジア仏教において基軸要素である教学宗派に関し、なお整備都城にあった。空海と最澄は中国密教および天台教学という新しい仏教を導入

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 曽田長人『スパルタを夢見た第三帝国 二〇世紀ドイツの人文主義』(講談社選書メチエ、2021年)を読了。一八世紀末期にフランスで革命が勃発し、キリスト教が代表する旧体制と啓蒙主義が代表する新体制との対立が激化した。ドイツでは人文主義者たちがカト

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 仲正昌樹『思想家ドラッカーを読む リベラルと保守のあいだで』(NTT出版、2018年)を読了。20世紀を代表する経営学者ドラッカーはウィーンで育った。多民族的な社会であったオーストリア=ハンガリー帝国が崩壊し、新しく誕生したオーストリア共和国が次

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 小野寺優『ラノベ古事記 日本の建国と初国シラス物語』(KADOKAWA、2021年)を読了。『古事記』をライトノベルとして再話した小説の第2巻で、中巻の前編が取り上げられており、神武天皇から垂仁天皇までが扱われている。今回も稗田阿礼や太安万侶が登場す

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正木晃『密教』
2021年11月21日13:22

 正木晃『密教』(ちくま学芸文庫、2012年)を読了。五世紀のインドでは永らく続いてきた仏教とヒンドゥー教の拮抗状態が破れ、ヒンドゥー教の優勢が明らかになりつつあり、仏教を再生させようという大胆な試みが大乗仏教の中から現れた。仏教はヒンドゥー教

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 生駒哲郎『畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史 因果応報と悪道』(吉川弘文館、2018年)を読了。仏教の世界観として六道という六つの迷いの世界がある。六道の中でも天・人・修羅道は三善道、餓鬼・畜生・地獄道は三悪道と区別される。 悪道が善道と決定的に違

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 福嶋亮大『ハロー、ユーラシア 21世紀「中華」圏の政治思想』(講談社、2021年)を読了。二一世紀の中華圏では新たな政治思想が形成されつつある。それは総じて右翼的で、西洋のリベラリズムに反発しているが、素朴な自国中心主義とも異なる。 この反リ

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 中島岳志『ヒンドゥー・ナショナリズム 印パ緊張の背景』(中公新書ラクレ、2002年)を読了。近代啓蒙主義は宗教に対し、相対主義の立場を推し進め、それは他宗教との「分かちがたい差異」を前提とした上でお互いを認め合うというものだった。この相対主義

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 今野元『ドイツ・ナショナリズム 「普遍」対「固有」の二千年史』(中公新書、2021年)を読了。中世・近世ドイツである神聖ローマ帝国はキリスト教的欧州の「普遍」的指導国だった。この国は徐々にドイツ国民意識を育んでいったが、ドイツ「固有」の要素に

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 尾羊英『災禍の神は願わない』(一迅社、2020年)を読了。エジプト神話を題材にしたマンガ。神々が世界を統べていた時代、軍神セトは兄王オシリスを殺害したと疑われて処刑されるが、兄の即位した直後に時間が巻き戻り、彼を守ろうとする。 古代エジプトは

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 阿部拓児『アケメネス朝ペルシア 史上初の帝国』(中公新書、2021年)を読了。2500年前、アケメネス朝ペルシアはアジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸にまたがる「史上初の世界帝国」として君臨した。「諸王の王」を自任するペルシア大王らは、アフラマズ

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 崔吉城『キリスト教とシャーマニズム なぜ韓国にはクリスチャンが多いのか』(ちくま新書、2021年)を読了。日韓は仏教や儒教など殆ど共通した宗教文化を以ている。ところが、日本のクリスチャンは一%前後で、韓国は戦後に世界で最もキリスト教化が進んだ

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山室静『北欧の神話』
2021年09月05日12:50

 山室静『北欧の神話』(ちくま学芸文庫、2017年)を読了。つい近年まで北欧の神話はヨーロッパでも余り人々の注意を惹き付けなかった。しかし、北欧神話は近代ヨーロッパを形作ってきた一番大きい勢力たるゲルマン民族の神話で、ヨーロッパ精神の母胎である

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 黒田智『藤原鎌足、時空をかける 変身と再生の日本史』(吉川弘文館、2011年)を読了。藤原鎌足は人口に膾炙されながら、時代の要請に応じて絶え間なくイメージを更新されていった。様々な視覚史料と文字史料の中で鎌足は宇賀弁才天や勝軍地蔵、維摩居士、

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 小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』(藤原書店、2012年)を読了。日本の近代というのは朱子学化の歴史だった。<朱子学的思惟>は共同体の全ての構成員を一つの<理>によって<主体化>し、それぞれの体現する<理>の多寡によって<序列化>する。 ここで

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 平藤喜久子編『ファシズムと聖なるもの/古代的なるもの』(北海道大学出版会、2020年)を読了。近代化が進む地域は、余りに急激な時代の流れに抗し、民族/俗を重視するような反近代主義やロマン主義が十八世紀から起こった。その中でそれぞれの地域文化で

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 赤松明彦『ヒンドゥー教10講』(岩波新書、2021年)を読了。一六世紀から一七世紀の南インドにおいて一元論的な傾向を持つ宗派が次々と成立した。こうした者たちは『ブラフマ・スートラ』への註釈を書くという共通の基盤の上に自分たちのアイデンティティ

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 植木雅俊『法華経とは何か その思想と背景』(中公新書、2020年)を読了。『法華経』は釈尊が入滅して五百年が経過した紀元一世紀末から三世紀初頭のインド北西部で編纂されたと考えられる。『法華経』にはその編纂当時の仏教界の在り方を間接的であれ批判

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片山杜秀『尊皇攘夷』
2021年07月01日16:01

 片山杜秀『尊皇攘夷 水戸学の四百年』(新潮選書、2021年)を読了。水戸徳川家は副将軍家として如何なる犠牲を払っても江戸の徳川将軍を守護し通すように神君たる徳川家康から命じられた。豊かな藩地も与えられぬまま無理難題だけ押し付けられ、ここに水戸

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 鈴木大拙『大乗仏教概論』(佐々木閑訳、岩波文庫、2016年)を読了。鈴木大拙は日本が生んだ世界的な仏教思想家だが、思想家としてのデビュー作は米国滞在中に英文で発表された『大乗仏教概論』だった。この本で鈴木は大乗仏教の真の意義とその理想を西洋世

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 大津留厚『さまよえるハプスブルク 捕虜たちが見た帝国の崩壊』(岩波書店、2021年)を読了。第一次世界大戦の対ロシア戦線でハプスブルク帝国軍は二百万人を越える兵士が捕虜になった。革命が起きてロシアが大戦から離脱すると、捕虜たちには帰国の可能性

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 中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書、2021年)を読了。小林秀雄と言えば政治嫌いの文学者として知られる。しかし、小林は政治や社会についての言及がかなり初期の段階から多い。 人間は集団を形成し、集団で行動しなければならない社会的な存在だが、

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 佐藤正英「日本思想における善と悪 『古事記』神話の場合」を読了。『古事記』神話において神は実体を現すことが少ない。寧ろ『古事記』神話の外部にあって『古事記』神話を枠付けているのが神で、アマテラスやスサノヲはそのような神を祀っている存在でし

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佐藤弘夫『日本人と神』
2021年04月28日17:36

 佐藤弘夫『日本人と神』(講談社現代新書、2021年)を読了。日本列島に住む人々が人間を超越する存在(カミ)を最初に認知したのは、畏怖の念を抱かせる自然現象や驚異的なパワーを有する動物に対してだった。当初は現象や動物そのものがカミとして把握され

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 里中満智子『女帝の手記 孝謙・称徳天皇物語 1〜5』(よみうりコミックス、1994年)を読了。阿倍内親王が主役の歴史マンガ。時系列的には『天上の虹』の続編に当たるのだろうが、繋がりは割りと薄く、『天上の虹』で印象的であった話の後日談がさらりと

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藤木俊『だめてらす』
2021年04月18日16:16

 藤木俊『だめてらす 1〜3』(小学館、2017年)を読了。日本神話がベースのラブコメを描いたマンガ。舞台は現代の日本で、神々がニートとなってしまい、新しい神を人間からスカウトするため、天照大神がお付きのヤタともども自ら人間界に降臨する。 タイ

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里中満智子『天上の虹』
2021年04月13日19:08

 里中満智子『天上の虹 1〜23』(講談社、1984-2015年)を読了。「持統天皇物語」と銘打たれた歴史マンガ。持統天皇の誕生から崩御まで描かれており、数多くのキャラクターが登場して多彩な人間模様を展開する。 本作は人数が多いにも拘わらず、登場人

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 小川原正道『近代日本の戦争と宗教』(講談社選書メチエ、2010年)を読了。明治国家の脆弱性を認識していた宗教者たちは、国家的な危機に対処する義務感もあり、自らの正当性を確保して教勢を拡大するため、その存在意義を示そうとした。政府側も彼らを通じ

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 吉田唯『神代文字の思想 ホツマ文献を読み解く』(平凡社、2018年)を読了。神代文字とは漢字が伝わる以前から日本に存在したとされる文字で、『秀真政伝紀』などのホツマ文献ではホツマ文字が使用されている。筆者は神代文字を古代の文字ではないとする立

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浮津『古事記 中辛』
2021年03月13日18:45

 浮津『古事記 中辛 1』(小学館、2021年)を読了。『古事記』など日本神話が題材のマンガ。作中世界において人間社会は先史時代で、神々は茶番を演じ、人間たちに刺激を与えて進歩を促している。 スサノオも姿の見えぬイザナギから渡される台本に従い、

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