村瀬学『徹底検証 古事記 すり替えの物語を読み解く』(言視舎、2013年)を読了。百余国に分かれた倭国を統一させたのは鉄の武器だった。鉄の力なしに日本という統一国家は有り得ず、その思いを古事記の神話篇は国が創世される物語に折り込んだ。 鉄を得
浅野裕一『古代中国の文明観 儒家・墨家・道家の論争』(岩波新書、2005年)を読了。太古の時代、人類は自然の猛威に怯えながら、辛うじて生き延びていた。住居や火の利用法の発明は人類を原始の闇から脱出させ、自然の驚異に対抗すべく文明が創り始められ
陸秋槎『元年春之祭』(稲村文吾訳、ハヤカワ・ミステリ、2018年)を読了。前漢時代の中国でかつて国の祭祀を担った名家に殺人事件が連続し、客として訪れていた豪族の娘が犯罪捜査に挑む。著者は漢詩と書誌学を専攻しており、本書の真相をこの時代でなけれ
安彦良和『古事記巻之三 蚤の王 野見宿禰』(中公文庫、2004年)を読了。シリーズとしては番外に当たる。主人公の野見宿禰は命を懸けた試合に勝ち、殉死を止めさせた話だけ歴史書に残されている。 本書はそれらに誉津別皇子の話を織り交ぜる。時代は垂仁
安彦良和『古事記巻之二 神武』(中公文庫、1997年)を読了。原田常治の説に基づき、国譲りから神武東征までの神話を歴史化している。『ナムジ』の続編に当たってもおり、そちらで登場した人物の行く末も描かれているので、両書を通読した方が面白い。 主
市立長浜城歴史博物館編『神になった秀吉 秀吉人気の秘密を探る』(サンライズ出版、2004年)を読了。江戸時代の人々は豊臣秀吉を神のように信仰した。これは江戸時代の世相や思想を秀吉という人物に投影したものだ。 江戸時代は身分の移動が困難で、百姓