mixiユーザー(id:21379232)

2021年10月19日13:19

336 view

今野元『ドイツ・ナショナリズム』

 今野元『ドイツ・ナショナリズム 「普遍」対「固有」の二千年史』(中公新書、2021年)を読了。中世・近世ドイツである神聖ローマ帝国はキリスト教的欧州の「普遍」的指導国だった。この国は徐々にドイツ国民意識を育んでいったが、ドイツ「固有」の要素に明瞭な基準は存在しなかった。
 この神聖ローマ帝国は革命国家フランスの侵攻で破壊され、旧ドイツ諸国は新しい西欧的=「普遍」的価値であるフランス革命の理念を受容するよう命じられた。フランス国民国家に対抗できるドイツ国民国家を求める運動はドイツ帝国を生み出し、ドイツ語を基調とする文化がドイツ「固有」のものと考えられた。ドイツ帝国は第一次世界大戦で激突した英仏から西欧的=普遍的価値の劣等国と決め付けられた。
 ヴァイマール共和国からNS政権にかけてドイツは国民国家の再建・強化に取り組み、血統こそドイツ人「固有」の基盤であるとするNSDAPが擡頭して政権を獲得した。西独は自由を掲げる「普遍」的権威たるアメリカの、東独は平等を掲げる「普遍」的権威たるソヴィエト連邦の影響下に入り、ドイツの再建を目指した。西のドイツ連邦共和国は西欧的=「普遍」的価値の優等生と見なされるようになり、東のドイツ民主共和国を併呑して欧州の指導国となったが、自信を付けてドイツ「固有」のものも復権した。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する