mixiユーザー(id:21379232)

2021年04月28日17:36

84 view

佐藤弘夫『日本人と神』

 佐藤弘夫『日本人と神』(講談社現代新書、2021年)を読了。日本列島に住む人々が人間を超越する存在(カミ)を最初に認知したのは、畏怖の念を抱かせる自然現象や驚異的なパワーを有する動物に対してだった。当初は現象や動物そのものがカミとして把握されたが、やがて抽象化が進み、霊異を引き起こす不可視の存在へと転換された。
 古代までカミは外在的かつ現世内的存在で、人と対峙するものだったが、中世には超越的存在に対する思弁が深化し、カミは絶対的存在=救済者にまで引き上げられた。その結果として人間と根源神の世界は分離したが、根源的存在はその超越性ゆえ、森羅万象に遍在して人間にも及び、人は己の心中に聖性を発見した。しかし、自然界に対する人々の知見が広がり、その仕組みを実証的に解き明かそうとする精神が勃興すると、彼岸世界のリアリティが色褪せた。
 近世では他界の絶対的存在に引き上げられて聖なる高みに上るのではなく、世俗的な功績や遺族の供養で内なる神性を輝かせ、カミに上昇すると信じられた。死後世界の生活も現世のようで、死者はこの世へ再生するのを待ち侘びているとされた。近代では身分差別から解放されたいという人々の願望がヒトガミへ上昇する形態を取ったので、人をカミに移行させる役割を与えられた天皇は、他の国民国家と較べて著しく宗教的色彩を帯びながら、国民統合の中心的機能を担った。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する