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日記一覧

 魚川祐司『講義ライブ だから仏教は面白い!』(講談社+α文庫、2015年)を読了。仏教は人間の自然な生き方に真っ向から逆らうにもかかわらず、それに価値を見出した人たちが二千五百年間ずっと存在し続けてきた。ゴータマ・ブッダは労働と聖職を放棄して

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南川高志『ユリアヌス』
2015年12月23日21:03

 南川高志『ユリアヌス 逸脱のローマ皇帝』(山川出版社、2015年)を読了。ユリアヌスはローマ皇帝コンスタンティウス二世の副帝だったが、皇帝の敷いたレールから外れ、遂には彼に反乱して皇帝位にまで到達した。更に皇帝となって後は、前皇帝の統治から転

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 南川高志『海のかなたのローマ帝国 増補新版』(岩波書店、2015年)を読了。ローマ帝国はブリテン島を支配したが、北辺の属州において「ローマ人」の意味は極めて曖昧で、ブリテン島の居住者はローマ帝国への帰属意識が濃厚ではなかった。都市や荘園におけ

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 パミラ・カイル・クロスリー『グローバル・ヒストリーとは何か』(佐藤彰一訳、岩波書店、2012年)を読了。グローバル・ヒストリーに取り組む歴史家は、事実を発見してそこから第一次的な歴史を組み立てるのではない。他の歴史家たちが行った研究を使って比

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 長縄光男『ゲルツェンと1848年革命の人びと』(平凡社新書、2015年)を読了。一九世紀前半のロシアに生まれたゲルツェンは、「デカブリストの叛乱」によって政治意識が目覚めた。彼は斃れたデカブリストたちの復讐を誓い、後に一家を挙げてロシアを出た。 

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 ユーリー・ストヤノフ『ヨーロッパ異端の源流 カタリ派とボゴミール派』(三浦清美訳、平凡社、2001年)を読了。中世にボゴミール派およびカタリ派というキリスト教の異端がヨーロッパの秩序を根底から揺さぶった。それら大異端の勃興はヨーロッパにおける

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 鄭大均『日韓併合期ベストエッセイ集』(ちくま文庫、2015年)を読了。日韓併合の時代に生きた人々のエッセイを集めたアンソロジー。韓国系日本人である編者は日韓関係論や在日外国人を専攻する教授。 戦後の日本は韓国や国内から日韓併合期の加害者性や歴

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 ピロストラトス『英雄が語るトロイア戦争』(内田次信訳、平凡社ライブラリー、2008年)を読了。ホメロスが詠った『イリアス』と『オデュッセイア』のパスティーシュ。英雄プロテシラオスの霊と交流のあるぶどう園主がフェニキア人の商人にトロイア戦争の実

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 ウィリアム・W・ハロー『起源 古代オリエント文明:西欧近代生活の背景』(岡田明子訳、青灯社、2015年)を読了。西欧の近代的な生活は古代オリエントの文明が起源であることを述べた本。本書は古代オリエントに対する偏見も是正してくれる。 一般的に古

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 嶋中博章『太陽王時代のメモワール作者たち 政治・文学・歴史記述』(吉田書店、2014年)を読了。ルイ十四世の治世は動乱の時代で、少なからぬ人々が人生の浮沈を経験し、その身に起こった悲喜こもごもをメモワール(回想録・覚書)という形で後世に伝えた

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 ミシェル・ウエルベック『服従』(大塚桃訳、河出書房新社、2015年)を読了。近未来のフランスでイスラム政権が成立するという小説。主人公はフランス人の教授で、社会でイスラム教の影響が強くなっていくことに翻弄されつつ、次第にそれを受け入れていく。

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 小谷信千代『真宗の往生論 親鸞は「現世往生」を説いたか』(法蔵館、2015年)を読了。釈尊は現世で仏となり、彼を師と仰ぐ仏教教団は、現世で仏となる修道が主流だったが、多くの弟子たちは現世で仏となれず、来世に天界で仏となる修道が考え出された。原

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 千坂恭二『思想としてのファシズム 「大東亜戦争」と1968』(彩流社、2015年)を読了。戦後、ファシズムは先験的に絶対悪とされ、批判されるにせよ思想の対象にはなっていない。思想であればどれほど邪悪なものであろうともそれが多くの人に支持された内容

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 デイヴィド・シンメルペンニンク=ファン=デル=オイェ『ロシアのオリエンタリズム ロシアのアジア・イメージ、ピョートル大帝から亡命者まで』(浜田樹子訳、成文社、2013年)を読了。ロシアのオリエント観は常に複雑なもので、エドワード・サイードの研

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諏訪緑『パピルスは神』
2015年06月25日12:26

 諏訪緑『パピルスは神 キケロ・カエサル・アッティクスの記』(夢幻燈コミックス、2015年)を読了。古代ローマの思想家キケロ、英雄カエサル、公刊人アッティクスの若き日を描いた漫画。主人公はお人好しのぼんぼんアッティクスで、キケロとカエサルは彼の

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 ロレッタ・ナポリオーニ『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(村井章子訳、文藝春秋、2015年)を読了。武装組織「イスラム国」はその近代性と現実主義で大成功を収めた。彼らは国際的な協調介入がシリアでは不可能であることを嗅ぎ付けると、シリア

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 吉田一彦『古代仏教をよみなおす』(吉川弘文館、2006年)を読了。日本の古代仏教についてはこれまで「国家仏教」という観点からこれを理解・説明しようとする見解がしばしば唱えられてきた。しかし、国家の仏教は古代仏教の一部を構成したに過ぎず、他に貴

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 河合信晴『政治がつむぎだす日常 東ドイツの余暇と「ふつうの人びと」』(現代書館、2015年)を読了。東ドイツ社会主義体制下では政治が身近な政治生活にまで浸透していた。余暇についての話題も公的な問題に転化し、一人一人の余暇活動の持つ社会的な異義

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 ルネ・セディヨ『フランス革命の代償』(山崎耕一訳、草思社、1991年)を読了。フランス革命とナポレオン帝政には切り離せず、幾つかの偉大な場面があり、偉大な登場人物もいるが、崇高な面と共に有害な面も取り上げるべきだろう。数字に基づいて人口動態、

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 ロバート・クナップ『古代ローマの庶民たち 歴史からこぼれ落ちた人々の生活』(西村昌洋監修、白水社、2015年)を読了。ローマ・ギリシア世界の人口は一般民衆が殆ど全てを構成していたが、記録を残したエリートは、彼らに対して盲目だった。エリートの作

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 魚川祐司『仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か』(新潮社、2015年)を読了。ゴータマ・ブッダの教えは「人間として正しく生きる道」を説くものではなく、「人間」とか「正しさ」とかいう物語を破壊してしまう作用を持つ。仏教においては終わりのない

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 井上文則『軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡』(講談社選書メチエ、2015年)を読了。四世紀、ローマ帝国では貧富の差が拡大し、伝統的な元老院貴族はますます富裕になりつつあった。しかし、彼らは富を都市に還元しなくなっていた。 これに伴

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佐藤正英『歎異抄論註』
2015年04月10日15:46

 佐藤正英『歎異抄論註』(青土社、1989年)を読了。東国で親鸞に師事した唯円は、師の孫である唯善を弟子とした。唯善は才気に溢れた貴公子で、唯円の眼には唯善が親鸞の全てを受け継ぐべき存在と映り、唯円は己が親鸞から得た全てを唯善に注ぎ掛けた。 最

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 ロバート・テンプル『図説 中国の科学と文明』(牛田輝代訳、河出書房新社、1992年)を読了。中国では施主的な封建領主の家が潰され、皇帝が強大な官僚組織の力を借りて支配者となった。この官僚組織は初期の段階では科学の発展を大いに援助していた。 現

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山折哲雄『悪と往生』
2015年03月30日08:49

 山折哲雄『悪と往生 親鸞を裏切る「歎異抄」』を読了。理論家肌の僧である唯円は師である親鸞の思想を分析し、その書『歎異抄』に親鸞の警句や金言を並べているが、そこではそれらの言葉が物語られた文脈には神経が注がれていない。分析家である唯円には親

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 今井雅晴『親鸞と歎異抄』(吉川弘文館、2015年)を読了。歎異抄は浄土真宗の開祖である親鸞が述べた言葉を門弟の唯円がまとめた書物とされている。唯円は東国の門弟で、東国は経済力が豊かな土地であって人々も教養があり、唯円も優れた学僧であって物事の

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 阿刀田高『新トロイア物語』(講談社文庫、1997年)を読了。トロイア戦争の英雄アイネイアスが主人公の歴史小説。神話的な世界を描いたホメロスの『イリアス』および『オデュッセイア』とウェルギリウスの『アエネイス』を基にしているが、説明の合理化が行

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末木文美士『日蓮入門』
2015年02月26日13:43

 末木文美士『増補 日蓮入門 現世を撃つ思想』(ちくま学芸文庫、2010年)を読了。戦前において日蓮は国家主義的に解釈され、戦後は民主主義・平和主義・合理主義の立場から再解釈された。戦前に日蓮研究はかなりの水準に達したが、戦後の研究はその批判の

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 フローベール『聖アントワヌの誘惑』(渡辺一夫訳、岩波文庫、1940年)を読了。三十年の歳月を掛けて完成した夢幻劇のような小説。紀元四世紀頃、隠者アントワヌが一夜の間に幻影から誘惑される。 フロベールは聖アントワヌの住んだ土地を旅行して多くの書

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 中田考『イスラーム 生と死と聖戦』(集英社新書、2015年)を読了。イスラーム法は唯一の神が定めた法(自然法)で、国ごとに政府が決めた法律(実定法)に人々が支配されることは、国家を崇拝する偶像崇拝・多神崇拝であって禁じられなければならない。自

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