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2021年06月25日08:49

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鈴木大拙『大乗仏教概論』

 鈴木大拙『大乗仏教概論』(佐々木閑訳、岩波文庫、2016年)を読了。鈴木大拙は日本が生んだ世界的な仏教思想家だが、思想家としてのデビュー作は米国滞在中に英文で発表された『大乗仏教概論』だった。この本で鈴木は大乗仏教の真の意義とその理想を西洋世界に向かって主張した。
 しかし、ベルギーの仏教学者プサンは本書に対し、厳しい批判を加え、鈴木が未熟な仏教理解を振り回し、架空の大乗仏教像を世界に紹介しようとした、お粗末な概説書と評価した。プサンの書評は鈴木に自己の未熟さを自覚させ、彼は本書の再版や日本語訳を許可しなかった。しかしながら、本書で鈴木が示す大乗仏教のイメージは、日本仏教との親近性を感じさせる。
 鈴木は明治新仏教の思潮から決定的な影響を受けていた。そのような鈴木の悟りの体験が本書の根底にはある。本書を仏教学という学問世界の中に含めず、仏教という宗教の流れに置いてみるなら、新たな聖典の誕生を意味している。
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