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2026年10月17日22:49

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「教授と美女」ハワード・ホークス〜楽しそうな老教授たちの奮闘コメディ〜

映画を見始めて、「あれ?見たことがあるストーリーだぞ」と気づいた。だけと前に見たのはカラーだった。8人の教授たちの研究と美女との出会い。そう、ジャズ誕生の音楽史を編纂している教授たちと美女を描いた『ヒット・パレード』(1947)だ。こちらは、ダニー・ケイとバージニア・メイヨで、ベニー・グッドマン、ルイ・アームストロング、ライオネル・ハンプトンなど豪華アーティストが続々登場するご機嫌なジャズのコメディ映画だった。それとストーリーはほぼ同じ。ハワード・ホークス自身が、1941年の『教授と美女』をセルフ・リメイクして『ヒット・パレード』を作ったのだ。元となった『教授と美女』が同じ物語なのは当たり前。本作は1941年製作、ゲーリー・クーパーとバーバラ・スタンウィック主演。バーバラ・スタンウィックは『レディ・イヴ』(1941)で、美しい詐欺師を見たばかりだ。ビリー・ワイルダーの『深夜の告白』(1944)でも、バーバラ・スタンウィックは悪女を演じている。ビリー・ワイルダーは本作の脚本に名を連ねているが、ホークス演出の見学許可を条件に脚本に参加したそうだ。翌年には監督デビューし、これに備えての勉強だったという。

とにかくゲイリー・クーパーを除いた7人の教授の爺さんたちがお茶目で可愛らしくて楽しい。一人だけ結婚経験があるが、そのほかは全く女性に縁のない堅物の学者たち。百科事典の編纂中で、生物学や歴史や数学・地理・物理などそれぞれの専門家ばかり。8人の教授たちがゾロゾロと公園を散歩しているシーンから始まる。それぞれが個性的でワイワイ勝手なことを言いながらなんだか楽しそうだ。ニューヨークのトッテン財団では、8人の学者たちによる百科事典の編纂が大詰めを迎えていた。しかし、文法学者のポッツィー教授(ゲイリー・クーパー)がある俗語を耳にしたことから、これまでの努力が世間から隔絶していたことに気づき、街へ調査に出かける。そこでナイトクラブの歌姫、オシェイ(バーバラ・スタンウィック)と出会い、彼女に協力を求めるのだが……。

バーバラ・スタンウィックがクラブでブギーを歌っている。そのノリノリのステージがまず楽しい。『ヒット・パレード』のジャズの要素が、本作でも披露されている。ギャングのボスで殺人への関与が疑われているジョー・ライラック(ダナ・アンドリュース)の愛人であるオシェイ。彼の情報を聞き出したい警察から逃げるため、隠れ家として教授たちの屋敷にやってきた。ポッツィー教授の俗語調査に協力しつつ、教授たちにダンスのステップ(コンガの踊り)を教えるところも楽しい。突如やってきた美女オシェイに教授たちは夢中なのだ。身の回りの世話をしている家政婦のブラッグ(キャスリーン・ハワード)が怖いお母さんみたいで、オシェイを目の敵にする。真面目なポッツィー教授は、オシェイに屋敷から出て行ってもらおうとするが、彼女を女性として意識したことを正直に告白し、首筋をハンカチで濡らして興奮を抑えたこと伝える。「可愛いのね」と言ってオシェイは、「ヤムヤム」(キス)の語の持つ意味を実演して見せる。本の上に乗ってポッツィー教授にキスをするのだ。すると慌てて、自分の部屋に行って首筋の後ろを濡らしてくるのがまた可笑しい。すっかりオシェイに夢中で本気になったポッツィー教授は、百科事典を完成させたら結婚をしようと言い出す。そして家を出る前に、「もう一回ヤムヤムをお願いします」と懇願するポッツィー教授にオシェイもまんざらでもない様子を見せる。

後半はオシェイの父に扮したボスの策略で、ニュージャジーで結婚式を挙げるからオシェイと一緒に来て欲しいと言われ、ポッツィーと7人の教授たちは彼女を連れてドライブの旅。ボスのジョーは、警察の検問を突破してオシェイを教授たちに連れてこさせ、自分と結婚するつもりだった。ところが途中で交通事故。ホテルに泊まった一行を、ボス一味が車で迎えに来て真実を明かす。ルームナンバーの「9」がひっくり返って「6」になって、間違ってオシェイの部屋に入ったポッツィー教授は、暗闇の中でオシェイへの愛の告白を本人の前でしてしまう。ポッツィー教授を騙して連れてきたアバズレなオシェイも、純粋な彼の告白に感激する。

最後はジョーとの結婚をオシェイが拒み続けたため、ジョーの手下が8人の教授たちと家政婦のブラッグ、トッテン財団の娘までを人質にして、オシェイを脅して結婚させようとするが、教授たちの知恵と策略で手下の二人をやっつける。そしてオーシェイとジョーの居場所を聞き出し、みんなで乗り込んで直接対決。ポッツィーはジョーとの「ボクシング対決」に勝利し、再会したポッツィー教授はオシェイと再び「ヤムヤム」するのだった。7人の教授たちが羨ましそうにそんな二人を眺めて去っていく。

後半は出来過ぎの展開だが、教授たちの若い二人への野次馬ぶりと応援、事故に遭って泊まったホテルの夜にみんなで歌を歌ったり、言い合いしたりがとにかく楽しそう。バーバラ・スタンウィックの明るさと老教授たちの関係が楽しいコメディだ。


1941年製作/111分/アメリカ
原題または英題:Ball of Fire

監督:ハワード・ホークス
製作:サミュエル・R・ゴールドウィン
原作:ビリー・ワイルダー、トーマス・モンロー
撮影:グレッグ・トーランド
音楽:アルフレッド・ニューマン
美術:ペリー・ファーガソン
キャスト:バーバラ・スタンウィック、ゲイリー・クーパー、オスカー・ホモルカ、ヘンリー・トラバース、タリー・マーシャル、レオニード・キンスキー、オーブリー・メイザー、ダナ・アンドリュース、ダン・デュリエ、S・Z・サコール、リチャード・ヘイドン、キャスリーン・ハワード
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