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2026年10月08日20:17

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「ディスクロージャー・デイ」スティーブン・スピルバーグ〜原点に立ち返ること〜

写真引用コピーライト Universal Studios. All Rights Reserved.

スティーブン・スピルバーグの話題の新作である。映画への愛を描いた自伝的な作品『フェイブルマンズ』(2022)以来4年ぶりとなる。本作は明らかにスピルバーグの代名詞とも言える宇宙人とのコンタクトを描いた『未知との遭遇』(1977)、『E.T.』(1982)の延長線上にあり、79歳になったスピルバーグの総決算的なものとも言えるかもしれない。地球外生命体に関する機密情報を開示しようとするものと開示させまいとするものとの攻防のドラマであり、列車と車の衝突のアクションあり、他者の脳にダイブして乗っ取るSFサスペンスありの誰もが楽しめるエンターテインメント作品だ。私は単純に楽しめた。タイトルの「デスクロージャー」とは「情報開示」のことであり、機密情報が明らかにされる日のことを描いている。

プロレスのシーンから始まる。レスラーの靴に踏みつけられて画面が真っ黒になる。プロレスとは明らかなエンタメ格闘技ショーである。どちらが勝つか分かっていても、その力でねじ伏せる技と戦いに観客は熱狂する。そして世界はキューバ危機以来の核戦争による人類滅亡の危機を迎えていた。そんな茶番としての戦いと、世界滅亡の戦いに人々が夢中になっているさ中に、サイバーセキュリティ専門家のダニエル(ジョシュ・オコナー)は、アメリカ政府の秘密組織であるウォーデックス社から、ロズウェル事件まで遡る人類と異星人との接触に関する様々な証拠を詳細に記したファイルを盗み出す。その隠され続けてきた事実を世間に公表しようとしているのだ。

ダニエルの恋人ジェーン(イヴ・ヒューソン)は元修道女であり、この世界を創造した神を信じている。もし、地球外生物の存在が明らかになり、キリスト教的な絶対神以外の超越的な存在が世界に示されることになれば、宗教は崩壊し、倫理観や秩序が壊れてしまわないか、世界の混乱を心配する。それに対して、ジェーンが駆け込んだ修道院長は、「それは地上(地球上)での話よ」と言う。地球外生物の存在を、「信仰を揺るがす脅威」としてではなく、それをも包み込む「神の創造のスケールの大きさ」として肯定するのだ。

そして「共感」というテーマを示しながら、地球外生物の存在を感じることによって、人類滅亡へ向けた馬鹿げた戦争をしている場合ではないことを示唆している。『オデュッセイア』のクリストファー・ノーランもスピルバーグも、世界が終わりつつある現代に危機感を感じているのは同じなのだ。そして同じように「帰るべき家」に立ち返ろうとする。テレビ気象予報士のマーガレット(エミリー・ブラント)が一羽の赤い鳥と出会うことで、潜在的な超能力を覚醒させていく。そして少女の頃の失われた記憶を取り戻すために、子供の時に住んでいた家を用意し、彼女の部屋を再現する。スピルバーグにとって、子供の頃の「ホーム」の「自分の部屋」こそは、立ち戻るべき原点であり、心の拠り所なのだろうと思う。目を見つめ合うこと、手を握り合うことが何度も繰り返し描かれながら、他者との境界を乗り越えていく。ダニエルとジェーンの隠れ家がワーデックス社の追跡者たちに包囲され、ダニエルが柵に隠れながら車を盗んで逃げる場面でのカメラのワンカット長回し。そこでは、カメラは柵の間をすり抜けて、ダニエルを捉え続けた。見つめ合うこと、通じ合うこと、信じ合うことで、柵や包囲網をすり抜けるように、攻防は描かれていく。それは他者を暴力的に乗っ取ることも出来てしまうし、共感しあいながら協力することも出来る危険な力である。

AIでフェイク画像が容易く作れてしまう時代にあって、何がフェイクで何が真実か分からない時代になっている。世界を映像で同時に驚かすことなどできるのだろうか。そういった意味では、そんな時代の転換期の最後の「デスクロージャー(情報開示)」なのかもしれない。SF大作ではあるが、派手な宇宙人とのコンタクトが描かれるわけではない。SF的な展開に目新しさがあるわけでもない。それでも逃げる者と追う者の追跡サスペンスとアクションをベースにしながら、過去の原点(ホーム・自分の部屋・スピルバーグの過去作)に立ち返る映画と言えるかもしれない。


2026年製作/145分/G/アメリカ
原題または英題:Disclosure Day
配給:東宝東和

監督・原案:スティーブン・スピルバーグ
製作:クリスティ・マコスコ・クリーガー、スティーブン・スピルバーグ
製作総指揮:アダム・ソムナー、クリス・ブリガム
脚本:デビッド・コープ
撮影:ヤヌス・カミンスキー
美術:アダム・ストックハウゼン
衣装:ポール・タゼウェル
編集:サラ・ブロシャー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
視覚効果監修:マシュー・バトラー
キャスト:エミリー・ブラント、ジョシュ・オコナー、コリン・ファース、イヴ・ヒューソン、コールマン・ドミンゴ、ワイアット・ラッセル、トミー・マルティネス、ヘンリー・ロイド=ヒューズ、エリザベス・マーベル、ヘティエンヌ・パーク、ギャビー・ビーンズ、ジェレミー・シェイモス、ブランドン・ウィルソン、プリヤンカ・ケディア、ローラ・リー・ゲイヤー
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