先日観た深田晃司監督の『ナギダイアリー』が「見るー見られる」という関係を描いた映画だったが、本作は、物語を「書くこと」によって、物語の中に自分を対象化し、傷やトラウマ、失恋などの呪縛から抜け出し、一歩前へと踏み出す映画である。
沖田修一の映画は結構好きで観ている。『横山世之介』(2012)、『南極料理人』(2009)、『キツツキと雨』(2011)、『モリのいる場所』(2018)、『滝を見にいく』(2014)、『おらおらでひとりいぐも』(2020)、『おーい!どんちゃん』(2021)、『さかなのこ』(2022)、『子供はわかってあげない』(2021)と、調べてみるとかなりの数を観ている。どこかとぼけていて、ユーモラスで、シュールな笑いがあり、不思議な人間たちが出てきて、滑稽で可笑しみがあり、温かみもあって人間臭い。なかでもオリジナル脚本の『滝を見にいく』、『キツツキと雨』、『モリのいる場所』、『おーい!どんちゃん』などに、沖田修一のユニークな面白さがよく表れている。そして本作も原作のない沖田修一の完全オリジナル脚本である。
3人の「さとこ」の物語。「人は誰でも一冊なら、自分の本が書ける」という言葉をきっかけ、3人の「さとこ」が自分の物語を書き始める。15歳の黒歴史みたいな初恋をする聡子(姫野花春)、35歳の沙都子(有村架純)は、6年に及ぶ不倫関係を続けている。そして子育てが一段落した里子(石田ひかり)は、忘れかけていた小説家の夢を思い出す。3つの物語のなかでも、最初の中学生の聡子の姫野花春がいい。アレルギー性鼻炎で鼻にネブライザーを突っ込んでいる恥ずかしい姿を見られて、恋が始まる。沖田修一は、子供たちをユーモラスに描くのが上手い。口を半開きにして、いびきをかく聡子。女友達との会話、「イカの塩辛」へのラブレター、「あ、でた、中井」と耳鼻科に現れる早瀬くん、帰り道の自転車を転がしてのどうでもいい会話を愛おしむ聡子、ソフトボールのライトの奇跡的なキャッチなど、エピソードが微笑ましい。クールな国語教師の吉田羊も良かった。
有村架純演じる沙都子は、オダギリジョーとの不倫の末の失恋を、自分の物語として書くことで客観化して、ゴミ箱に捨てられた。石田ひかり演じる里子は、書くことで忘れていた自分を取り戻していく。なんとも愛らしい「さとこ」たち。心が温かくなる映画だ。
2026年製作/139分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督・脚本:沖田修一
プロデューサー:筒井竜平、佐藤美由紀、久保田傑、田中勇也
撮影:芦澤明子
照明:菰田大輔
録音:山本タカアキ
美術:安宅紀史
編集:岡崎正弥
音楽:柴田聡子
主題歌:折坂悠太
キャスト:有村架純、石田ひかり、姫野花春、黒田大輔、宮部純子、泉有乃、大月美里果、小川冬晴、青木柚、川瀬陽太、島田桃依、中井友望、中村優子、細田佳央太、鳴海唯、�眦痛�作、古舘寛治、吉田羊、オダギリジョー、筒井道隆
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写真引用

2026 「さとこはいつも」製作委員会
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