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2026年09月24日18:19

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「特急二十世紀」ハワード・ホークス〜演出家と女優の愛憎をドタバタ・コメディで〜

ハワード・ホークスのスクリューボール・コメディの傑作『赤ちゃん教育』(1937)以前の1934年に作られたハワード・ホークス作品。これもかなりハチャメチャなスクリューボール・コメディと言える。ただし、同じ1934年に作られた『或る夜の出来事』(1934)や『赤ちゃん教育』のようなロマンチック・コメディというわけではなく、狂気の天才・舞台演出家と女優との愛憎まみえる二人の確執の物語であり、特に後半の特急列車内のドタバタは、いろんな人物も登場して大騒ぎの狂乱を描いていて面白い。つかこうへいも三谷幸喜も参考にしただろうと思えるような演劇的なドタバタ・コメディだ。

ブロードウェイの演出家のジョン・バリモアの大袈裟ともいえる過剰な演技が笑える。熱き天才演出家オスカー・ジャッフェ(ジョン・バリモア)は、下着のモデルだったミルドレッド・プロトカ(キャロル・ロンバード)に声をかけて、次作のヒロインに抜擢。本読みが始まって、彼女の素人の大根役者ぶりにスタッフも頭を抱えるが、劇作家で演出家のオスカーは彼女を気に入り、リリー・ガーランドと勝手に芸名をつけ、稽古を始める。8時間に及ぶダメ出しの嵐、そしてチョークで舞台上の彼女の動きは事細かく指示が出され、舞台上はチョークの線だらけ。耐えきれなくなったリリーは「舞台を降りる」と言い出すが、「君は女優になるべき人なんだ」と熱くオスカーに言われ、抱きしめられて稽古は続く。悲鳴の声を出せない彼女のために、針でお尻を刺して悲鳴を上げさせるパワハラ演技指導も描かれる。

そして舞台は大成功。オスカーは彼女の楽屋に星の印を付ける。スター女優の道を歩み始めたリリーは、オスカーに感謝を伝え、刺された「記念の針」を大事に取っていた。二人は公演を重ね、愛し合うようになる。しかしジャッフェの愛の独占欲は尋常ではない。リリーを自由にさせず自分のもとに縛り付け、彼女の不満は募っていく。大女優になったリリーも高慢な女になっていた。二人はケンカとなり、オスカーは飛び降り自殺をほのめかすが、「下手な芝居はやめて」と見透かすリリー。束縛をやめたかのように振る舞っていたオスカーだが、今度は探偵を雇ってリリーの行動や電話の盗聴で秘かに監視を続けていた。

そんなオスカーの電話の盗聴がリリーにバレて、彼女は怒ってハリウッドへ旅立ってしまう。別の女優で公演を続けるも、失敗続き。オスカーは劇場料も払えなくなり、警察からも指名手配。夜逃げ同然で「特急二十世紀号」でニューヨークへ向かう。オスカーは変装して、まんまと刑事の目を逃れる。何度もクビを言い渡され続けているビジネスパートナー、オリヴァー・ウェッブ(ウオルター・コノリー)とマネージャーのオーエン・オマリー(ロスコー・カーン)とオスカーの3人は列車に乗り込む。本作は、ここからが真骨頂だ。「特急二十世紀」号のドタバタの舞台が始まる。

列車の中でおかしな人物が混乱を巻き起こす。「悔い改めよ」というステッカーを列車内のあちこちに貼り続ける男マシュー・J・クラーク(エチエンヌ・ジラルド)。自称・製薬会社の社長だが、熱心なキリスト教パブテスト派の信者で、精神的な病気を抱えており、しかも偽の小切手を出しまくる。「悔い改めよ」のステッカーが車掌の背中やオリヴァーの帽子など、いろんなところに貼られていくのが笑える。そして、偶然にもリリーが若い恋人ジョージ・スミス(ラルフ・フォーブス)とオスカーの隣の個室に乗り込んでくる。劇場を立て直し、大女優となったリリーともう一度舞台をやって金を儲けようと画策するオリヴァーやオーエン、オスカーもまたリリーとやる新たな舞台の構想の練り出す。受難劇の役者をしていた長い髭を生やした二人組も登場し、それぞれの思惑が入り乱れて列車内は混乱していく。オリヴァーの公演の申し出に、「顔も見たくない」とオスカーへの怒りが消えないリリー。リリーに求愛する若き恋人を見て激怒して追い出そうとするオスカー。そして、公演の資金を提供するとオリヴァーに約束をして小切手を切るクラーク。最後はピストルも使われ、オスカーが死にかけたと思ったら、弾は当たっていなかった。しかし、リリーを騙すために、死にそうな芝居をして契約書にサインをさせようと企むオスカー。死の間際のオスカーに同情し、泣きながら心を寄せるリリー。まんまとサインをさせられたリリーは、最後にオスカーと再び舞台の稽古を始めるのだった。「私のどんな演出も愛情だ」と最初と同じオスカーの台詞が反復され、リリーの動きのためにチョークで舞台に線を書き、リリーを怒らせるオスカーだった。

演出家と女優の求めあいつつも憎しみ合うような異様な関係がコメディとして描かれる。演出家は自分が見出した才能を手放せなくなり、女優もまた最初は演出家に感謝しつつ、いつしか自分の力で成功したような気になり、演出家の束縛から抜け出そうとする。気が強く高慢な女優を演じたキャロル・ロンバードと独善的で嫉妬深い演出家を演じたジョン・バリモアの二人のやり取り、ケンカの繰り返しが見事だ。そして何度もクビを言い渡されるウオルター・コノリーといつも酒を飲んでいるロスコー・カーンの愚痴を言い続ける三銃士の脇の二人もいい。そして無表情にかき回すとぼけたクラーク氏を演じたエチエンヌ・ジラルド。それぞれの特異なキャラクターは、舞台を見ているような楽しさがあった。演じることの虚と実。生きていることそのものが演じていることの可笑しさが描かれている。テンポよく映像にまとめたハワード・ホークスの演出が冴えている。


1934年製作/91分/アメリカ
原題または英題:Twentieth Century

監督・製作:ハワード・ホークス
原作:チャールズ・B・ミルホランド
撮影:ジョゼフ・オーガスト
キャスト:ジョン・バリモア、キャロル・ロンバード、ウォルター・コノリー、エチエンヌ・ジラルド、エドガー・ケネディ、ビリー・セウォード、ロスコー・カーンズ、ラルフ・フォーブズ、チャールズ・リービソン、デイル・フラー、クリフォード・トンプソン
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