ニコラス・レイの1948年の初監督作品。フィルム・ノワールの傑作であり、以前に見たのだが久しぶりに見直すことができた。アマプラにて鑑賞。原作のエドワード・アンダーソンが1937年に発表した『夜の人々』(新潮文庫)も最近、本屋で見つけて読んでおり、この原作がまたいいのだ。レイモンド・チャンドラーは「これまで書かれた犯罪小説の中で最高の一作」と、ある手紙で称賛したと言われている。映画化はニコラス・レイによって本作『They Live by Night』1948年として、ロバート・アルトマンによって1974年『ボウイ&キーチ』(原作と同じ『Thieves Like Us』)として二度映画化された。ニコラス・レイの本作は、ジャン=リュック・ゴダールが「予算においてはB級、精神においてはA級」と評したとも言われ、フィルム・ノワールの古典的名作とされてれている。ただ、ハリウッド映画の『ヘイズ・コード』の規制もあり、「犯罪者に対する観客の共感や同情を誘ったり、結婚していない男女の性的な関係を肯定的に描くことが難しかった」ことから、ニコラス・レイは若い二人ボウイとキーチの純愛に焦点を絞って映画化している。
アメリカの田舎道を走る一台の車の空撮から始まり、パンクして車が止まる。刑務所を脱獄してきた3人は、銀行強盗で金を奪い、盗んだ車の持ち主を殴りつけ、走って逃げる。そんな3人を再び空撮で捉え、足を引きずる若い男ボウイ(ファーリー・グレンジャー)は、その場で迎えが来るのを待つことになる。不況の嵐が吹き荒れていた1930年代の南部、ミシシッピー。リーダー格のTダブ(ジェイ・C・フリッペン)とアメリカ先住民で片目の男チカモウ(ハワード・ダ・シルバ)は従兄の隠れ家に先に行き、茂みの中で野良犬と一緒に隠れていたボウイをチカモウの従兄の娘キーチー(キャシー・オドネル)が車で迎えにやってくる。まだ少年のあどけなさが残るボウイ、帽子をかぶって髪を結った田舎娘のキーチー。異性を知らない若い二人。お互いは素っ気ない素振りだが、視線が交わされ、二人はお互いに関心を寄せる。銀行強盗を重ねてきた根っからのワルであるTダブや酒や賭博で金にだらしないチカモウに比べ、ボウイは運悪く犯罪に巻き込まれた若き青年。弁護士に相談してまともな人生に戻り、いずれはガソリンスタンドを経営したいという夢をキーチーに語る。しかし、銀行強盗は繰り返され、ボウイは自動車事故を起こしてしまう。
この映画では、ボウイは度々怪我を負う羽目になり、再会したキーチーは、ボウイを看病することになる。結っていた髪を鏡の前でほどき、キーチーは美しい女性になっていく。風に揺れる空と木々が映し出され、風の音が鳴り、トラックの音におびえるボウイ。ボウイは強盗した銀行の隣りの店で買った腕時計をキーチーにプレゼントする。新聞にボウイが警官を撃った犯人だと出ており、二人はバスで逃避行の旅に出る。そして途中で降りた停留所で、24時間営業している結婚許可証が20ドルで手に入る所で簡素な結婚式を挙げる。ボウイはキーチーに何度も「いま、何時?」と聞き、プレゼントしてもらった腕時計を見て、キーチーが答える。そして二人は、部屋を借りてひっそりと暮らし始める。
しかし、再びチカモウが現れ、銀行強盗の仲間に引きづりこまれるボウイ。ボウイはいつの間にか強盗3人組の首謀者にされ、チカモウは「片目の男」とばかり呼ばれることにイラつく。そしてTダブは逃走中に射殺され、チカモウも酒屋を襲って殺された。二人だけになって車で逃げる。キーチーのお腹には赤ちゃんが宿り、二人は着飾って街に繰り出す。クラブで聴くジャズ歌手の歌。メキシコ行きの計画。キーチーと赤ちゃんを巻き込まないために、金をTダブの義姉マティ(ヘレン・クレイグ)に渡し、キーチーを託してボウイは一人で出ていこうとする。しかし、マティの警察への密告があり、ボウイは警察に包囲され、射殺されるのだった。
銀行強盗や銃撃戦は一切描かれない。事件は新聞やラジオで伝えられるだけだ。車での逃走が主に描かれる。ラストにボウイがキーチーのもとに戻ってきたところを、モーテルを包囲した警官が発砲するだけだ。アーサー・ぺンの『俺たちに明日はない』のボニー&クライドのような派手に銃撃されて果てるシーンもない。残されたキーチーが、ボウイの置き手紙を読んで映画は終わる。未来を語りつつも、先がどんどん見えなくなって、未来が塞がれていく二人の逃避行。ヒリヒリするようなせつない二人の今が描かれる。フィルム・ノワールというよりも踏み外した道から抜け出せない純粋な愛の物語だ。
1949年製作/アメリカ
原題または英題:They Live by Night
配給:IP
監督:ニコラス・レイ
脚本:チャールズ・シュニー
脚色:ニコラス・レイ
原作:エドワード・アンダーソン
製作:ジョン・ハウスマン
撮影:ジョージ・E・ディスカント
音楽:リー・ハーライン
キャスト:ファーリー・グレンジャー、キャシー・オドネル、ハワード・ダ・シルバ、ジェイ・C・フリッペン、ヘレン・クレイグ、ウィル・ライト、マリー・ブライアント、イアン・ウルフ
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