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2026年06月02日19:43

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「農婦の妻」アルフレッド・ヒッチコック〜無声映画時代の嫁捜しの物語〜

アルフレッド・ヒッチコックがイギリス時代に手がけた監督第7作、1928年の無声映画。U-NEXTには未見の初期のヒッチコックの映画が結構あるので順次見ていこうと思う。これはリストにあった中で一番古い映画。無声映画でそれなりに長い。

妻に先立たれた裕福なイギリスの農場主であるサミュエル・スイートランド(ジェームソン・トーマス)は、娘の結婚を機に再婚を決意する。妻は死ぬ間際にメイドのミンタ(リリアン・ホール=デイヴィス)に、「夫の下着を干すのを忘れないでね」なんて言い残して死んでいく。干されるスイートランドの下着が映し出され、妻が亡くなったことがわかる。

農業主であるスイートランドは髭をたくわえ、目がギョロリとして偉そうな男である。そしてメイドのミンタと相談しながら、4人の花嫁候補の名前をメモに書き、一人一人の女性に求婚していくのだ。女性を嫁にするのは簡単だと言わんばかりに自信満々で口説きに行く。偉そうで自分勝手で傲慢な男である。しかし裕福な農場を持っているとはいえ、もう年老いた老人である。次々と女性にフラれていき、書いたメモの名前を消していく。スイートランドの下男であるアッシュ(ゴードン・ハーカー)という老人がまたクセの強い顔をしており、スイートランドをからかったりする。花嫁候補の一人である女性の家のティーパーティーに手伝いに行くのだが、なぜがブカブカの服装を用意されて、いつもズボンが落ちそうになりながら人々の世話をする。道化的な役回りだが、いかつい顔をしている。花嫁候補の女性たちも個性的なキャラクターばかりだ。スイートランドは、相手を褒めあげて求婚するが、相手がその気がないと分かると、態度を豹変させて相手の悪口を言い出す。その毒づいた言葉に傷ついてヒステリックに騒ぎ出す女性も登場。ちょっとしたドタバタ騒ぎもある。候補だった4人の女性全員に断わられて意気消沈、自信を無くしたスイートランドだったが、目の前の椅子に座っているメイドのミンタの存在に気づく。4人の名前を消したメモに、ミンタの名前を書き、求婚する。ミンタもスイートランドのことを慕っており、めでたしめでたしのハッピーエンド。一度断わった女性2人が、求婚を受けようと考え直してもう一度スイートランドのところにやって来るが、時すでに遅し。メイドのミンタは美しく着替えて階段から降りてくるのだった。

暖炉の前の二つの椅子を演出として効果的に使っている。夫婦で多くの時間を過ごしたニ脚の椅子。その不在の椅子に何人もの女性が妻として座るのをイメージするスイートランドだったが、身近にいて自分のことを誰よりも分かっているミンタが椅子に座っているのを見て、彼女の存在に気づいたのだった。事件も起きず、嫁捜しのヒューマン・ストーリーだが、男性本意の身勝手な男の話。無声映画だが動きは少なく、やや退屈。役者たちは個性的な顔立ちと表情で見せていく。カメラを正面から見据えたカットも多く使われている。


1928年製作/イギリス/98分
原題または英題:The Farmer's Wife
製作会社:ブリティッシュ・インターナショナル・ピクチャーズ

監督・脚本:アルフレッド・ヒッチコック
原作:イーデン・フィルポッツ
脚色::エリオット・スタナード
製作:ジョン・マックスウェル
撮影:ジョン・J・コックス
編集:アルフレッド・ブース
キャスト:ジェームソン・トーマス、リリアン・ホール=デイビス、ゴートン・ハーカー、ギブ・マクローリン、モード・ギル
☆☆☆3
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