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2026年05月21日16:21

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「何がジェーンに起ったか?」ロバート・アルドリッチ〜おぞましき嫉妬の姉妹と老婆の怪演〜

ジェーンを演じるベティ・デイヴィスがとにかく怖い。皺だらけで化粧をした老婆の狂気。過去の栄光が忘れられないおぞましい女の狂気を描いた怪作である。無声映画のハリウッドのスター時代をいつまでも忘れられない老女優を描いたビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』(1950)のグロリア・スワンソンもおぞましく怖かったが、このベティ・デイヴィスはそれ以上だ。彼女のおぞましさから目が離せなくなる。

かつてベビー・ジェーンという名で子役として活躍したジェーン(ベティ・デイヴィス)。歌も踊りも大人気のジェーンが父親と一緒にステージで「パパに手紙を」という愛らしい歌を唄うシーンから始まる。ベビー・ジェーンの人形も売られて、それも大人気。しかし、舞台裏ではジェーンはワガママ放題で「アイスクリームを買って」と父親に駄々をこねる。それをじっと見ている姉のブランチ。「いつか、お前も注目を集めるようになるわ」と母親に慰められる。未来を見つめるその姉の強い眼差しが印象的に描かれる。そして、大人になった姉のブランチ(ジョーン・クロフォード)はハリウッドで美しい女優として大成功し、高級車も乗れるような大スターになった。一方で、妹も女優としてデビューするも大根役者と呼ばれ活躍できず、酒浸りの日々になっていた。スター女優の姉は妹ジェーンも一緒に出演させる契約をして、妹を助けていた。妹がパーティーで酔い潰れた夜、痛ましい自動車事故が起きる。この事故はジェーンが嫉妬にかられブランチを轢き殺そうとしたと報じられた。間一髪で難を逃れたブランチではあったが、この事故で背骨に重い損傷を受け下半身不随となり、ジェーンはその責めを負うかたちで姉の面倒を見ることになった。

映画のほとんどは、表舞台から消えた老姉妹が古い屋敷で暮らす室内で展開される。車椅子生活の姉のブランチは2階の部屋で生活している。その姉の面倒を見ながら一緒に暮らす妹のジェーンは、いつまでも姉への嫉妬と恨み、憎しみが消えない。姉が主演している古い映画をテレビでやっていても、すぐに消してしまうし、隣の婦人が「映画よかったわ」と姉に花を届けても、渡しもしないで捨ててしまう。ファンレターも姉に見せずにゴミ箱へ。そして姉の食事の世話をしていたジェーンは、嫌がらせをするようになり、次第に度を超した狂気へと至っていく。姉の飼っていた籠の鳥を殺して食事に出してみたり、ネズミを皿に載せてみたり。姉は食事を取れなくなり、弱っていく。精神的におかしくなっていく妹を医者に診てもらおうと姉が電話をしようとするが、電話線を切られ、外部との接触手段を禁じられてしまう。財産を管理している姉のサインの筆跡を真似て、お金を引き出し、姉の世話をしていた家政婦もクビにしてしまう。

そもそも車椅子生活者が2階の部屋に閉じ込められていること自体あり得ないのだが、姉のブランチは一歩も外に出られない。手紙を書いて窓から投げて、隣の婦人に助けてもらおうとするが、その手紙も妹のジェーンに見つかってしまう。階段を必死になって降りて医者に電話するも、妹は声音を変えて姉を演じて、「他の医者に頼んだから来なくていい」と嘘を言う。家を売って自分を施設に入れようとする姉を蹴り続け、ジェーンは声音を替えて姉に成りきり、酒を注文し、ますますおかしくなっていく。

ジェーンは、昔の歌「パパに手紙を」をステージで再び歌おうと、ピアノの伴奏者を新聞で募集し、練習を始めるのだ。老婆が少女の歌を家で練習するシーンは、とにかく不気味でおぞましい。かつてのベビー・ジェーンの人形を持ち出し、ステージ衣装まで用意する。かつての夢に取り憑かれた老婆の狂気。姉を苛めてあざ笑うベティ・デイヴィスの笑い声は映画史に残るおぞましさだ。2階のブランチが用事の時に呼ぶブザーの音が何度も鳴り、ジェーンをさらに苛立たせる。そのブザーもついに取り外して部屋で孤立状態に。心配で家に入り込んだ家政婦が監禁されたブランチを見つけて助けようとすると、ジェーンは咄嗟に家政婦を殴り殺してしまうのだ。

ラストは海辺へと逃げてきたジェーンは、弱って死を前にした姉から、足が不自由になったあの夜の交通事故の真相を聞く。酩酊状態だったジェーンが姉を轢き殺そうとしたのではなく、パーティーでジェーンに笑いものにされたことから、姉のブランチが妹を轢き殺そうとしたのだ。ジェーンは咄嗟によけて車は柱に激突し、運転していたブランチが半身不随の重傷を負ったのだった。酔って記憶がなく、その場からジェーンが逃げたことで、重傷を負ったブランチが一人助け出され、ジェーンに轢き殺されかけたことにしたのだった。相手の成功の嫉妬に駆られ、お互い無駄に憎み合っていた姉妹。ラストは、ジェーンがアイスクリームをブランチのために買いに行き、警察に見つかって捕まる。その人だかりの囲いの中で、両手にアイスを持って踊るラストのジェーンの俯瞰ショットが素晴らしい。浜辺での哀れな狂気のダンス。少人数の登場人物しか出ない中で、姉と妹の確執がおぞましく、ベティ・デイヴィスの怪演が忘れ難い映画だ。ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードは、実際にライバル関係にあり、確執のあった2人の競演は当時話題を呼んだそうだ。


1962年製作/134分/アメリカ
原題または英題:What Ever Happened to Baby Jane?

監督・製作:ロバート・アルドリッチ
原作:ヘンリー・ファレル
撮影:アーネスト・ホーラー
音楽:フランク・デ・ボール
キャスト:ベティ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード、アンナ・リー
☆☆☆☆4
写真引用TM & コピーライト Warner Bros. Entertainment Inc.
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