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2026年05月20日18:29

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「サムライ」ジャン=ピエール・メルヴィル〜心理ではなく繰り返すアクションを徹底して描く〜

ジャン=ピエール・メルヴィルの傑作『サムライ』が4Kレストア版で劇場公開されたので、観に行った。レビューについては6年ほど前だがしっかり書いたので、それ以上付け加えることもないのだが、それでも観た記念として少し書いておく。

『サムライ』(1967)レビュー
<https://hideyosi719.blog.fc2.com/blog-entry-1345.html>

ファーストシーンの部屋の引きの画面だが、センターに鳥かごがあることに気づいた。雨の道路を走る車の走行音が海のさざ波のようで、鳥の鳴き声がずっと聞こえている。台詞がないなかで、鳥の鳴き声が強調されている。映画の中でも、鳥は思った以上にヨリで撮られているし、彼の部屋で鳴き声は終始耳に残る。アラン・ドロン演じる殺し屋は、ひょっとしたらカゴの中の鳥そのものなのかもしれない。「サムライの孤独ほど深いものはない」と武士道の精神をメルヴィルが語ったように、カゴの中の一羽の鳥は孤独そのものである。組織から依頼を受けつつ、単身でなんの関わりもない者を殺し、警察の尋問を受けると組織から命を狙われ、警察からも追われ続ける一匹狼の殺し屋。カゴから自由に飛び出て動き回るような存在ではない。だからこそ、最後の「死」を自分なりに選んだのだ。

台詞がほとんどない中で、徹底してアクションが描かれている。いつでも無表情な殺し屋の心理や心の内を描こうとしていない。恋人にアリバイを頼むときも、最後に「決着をつける」と言いに行くときも、殺し屋の態度は素っ気なくシンプルで、感情を表に出さない。ましてや愛を語ることなどしない。そして、部屋を出て行くときの帽子のツバをいじるルーティン、車を盗む時の鍵を順番にさしていく手順、盗んだ車のプレートの付け替えと拳銃と金の受け渡し、殺しの前の白手袋など、黙々とアクションだけが丁寧に描かれている。階段の上り下り、車を盗み、道路を歩き、地下鉄に乗り、銃で相手を撃ち、部屋に戻る。そのアクションを繰り返す。アリバイを確認するための警察の取り調べシーンが異様に長く丁寧だ。容疑者をステージに並ばせ、帽子を替え、コートを替え、何度も目撃者に証言させる。また、地下鉄に乗るアラン・ドロンを追跡する警察組織との追いかけっこも、多くの時間を割いて描かれている。一方で、殺しの場面はひどく呆気ない。だから銃撃戦もなければカーアクションも爆発といった派手さもない。そしてラストも呆気ない唐突な終わり方だ。

なぜ殺し屋ジェフ・コステロが最後にバーのピアニストの女性ヴァレリー(カティ・ロジェ)に弾丸の入っていない銃を向けて死んだのか、すぐには理解できないかもしれない。あらためて見て思ったのは、ジェフが恋人のジャーヌ(ナタリー・ドロン)と見つめ合うシーンよりも、ジェフがヴァレリーと視線を交わすシーンの方が多いように思ったのだ。ヴァレリーという女性が強く印象に残るのは、ジェフにとっても彼女は重要な存在だったのだ。アリバイを疑われ、一番の間近な目撃者であったヴァレリーの偽証言のために、ジェフは救われ、彼のアリバイは立証された。しかし、なぜヴァレリーが嘘をついたのかを確かめるために、ジェフは彼女を訪ね、2時間後に電話をもらう約束をした。部屋に盗聴器が付けられていたジェフは、公衆電話からヴァレリーに電話するも、彼女は部屋で出なかった。ヴァレリーは殺人を依頼したボスの愛人でもあったので、ジェフに依頼主のことを何も言えなかった。ただ、ジェフの釈放は警察の罠ではないとボスにヴァレリーが伝え、だからこそ再契約をしに男がやって来たのではないか。部屋にいたジェフを襲ったボスの手下の男は、誰の殺しを依頼しに来たのであろうか?逆襲してジェフは殺しの依頼主のボスの居所を突き止めたので、その殺しの依頼は語られぬままであったが、ひょっとしたらヴァレリーを殺す依頼だったのかもしれない。知りすぎてしまった女として。ボスを殺したあとに、ジェフがわざわざあのバーに行って、自らの「死」を選んだのは、彼なりのカタの付け方だった。殺し屋としての流儀とでもいうのだろうか。警察に撃たれるつもりで白い手袋を付け、殺すつもりのないヴァレリーに銃を向けた。ヴァレリーもまたボスのカゴの鳥であり、自由ではなかった。それは自分自身と重なったのかもしれない。ボスを殺したジェフにとって、ヴァレリーを殺す理由なんてなかったのだ。アリバイ工作に協力してくれた恋人のジャーヌを守るためにも、ジェフは自らの終わり方を自分で選んだ。詳細を描かない作りなだけに、余韻が残る終わり方になっている。


1967年製作/フランス
原題:Le Samourai
配給:日本ヘラルド映画

監督:ジャン=ピエール・メルビル
脚色:ジャン=ピエール・メルビル
原作:ゴアン・マクレオ
製作:ジョルジュ・カサティ
撮影:アンリ・ドカエ、ジャン・シャルヴァン
音楽:フランソワ・ド・ルーベ
キャスト:アラン・ドロン、ナタリー・ドロン、カティ・ロジェ、フランソワ・ペリエ
☆☆☆☆☆5
写真引用(C)1967 – Production Filmel – CICC – TCP / Editions René Chateau
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