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2026年03月28日17:55

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「ねえ!キスしてよ」ビリー・ワイルダー〜一夜限りのベッドが入れ替わるロマンチック・コメディ〜

ビリー・ワイルダーらしいドタバタ・ロマンチック・コメディ。売れない作曲家が色男の歌手に自分の曲を売り込もうと、愛する妻を別の女性に演じさせ、一夜のベッドを交換する突拍子もない展開。トラブルとハプニング続きで離婚騒動まで起きるが、最後は曲も売れてめでたしめでたしの物語。イタリアの戯曲を元にして映画化。脚本はビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド。ワイルダーは当初ジャック・レモンに主演をオファーしたがスケジュールが合わず、その後ピーター・セラーズに決まるも心臓発作で降板。最終的にディーン・マーティンになった。ディノとしてディーン・マーティン自身のように演じている。歌も上手く、はまり役だった。ポリーの役は、マリリン・モンローを想定していたらしい。それはそれでちょっと見たかったかも。

ガソリンスタンド経営者のバーニー・ミルサップ(クリフ・オズモンド)とピアノ教師であるオービル・J・スプーナー(レイ・ウォルストン)のコンビがまず楽しい。自分で詩を書いてオービルの曲が売れるように、女好きの有名歌手のディノ(ディーン・マーティン)にアピールしようとあれこれ悪知恵を働かせる大男のバーニーと、美人の妻を寵愛して嫉妬深い小男のオービル。ピアノ弾きの作曲家でいくつも二人で曲を作っている。冴えない中年男のオービルは齢の離れた美しい妻ゼルダ(フェリシア・ファー)の浮気が心配で心配で、ゼルダと接点を持つ牛乳配達員や歯科医に対して異常な猜疑心を示す。ゼルダが嘘をついて出かけていたその日は、二人の5周年の結婚記念日で、ゼルダはケーキを手配していたのだった。

ラスベガスの公演を終えて、スポーツカーでこの町にやって来たディノに曲を売り込むために、ガソリンスタンドのバーニーは、ディノの車に細工して足止めさせ、このオービルの家に泊まるよう仕向ける。ディノは起きたときに頭痛がしないように、毎晩セックスをしないとダメな男。バーニーは、オービルの妻ゼルダを喧嘩して実家に帰らせ、町外れの「ヘソ」という酒場のウェイトレス兼売春婦をゼルダの代わりに金で呼んで、ディノの相手をさせようと企む。やって来たのは酒場の”ピストル”・ポリー(キム・ノヴァク)。3人で夕食をとった後、オービルはピアノでディノに曲を弾き、ポリーはある曲をリクエストする。オービルが妻に結婚を申し込んだ時に書いた曲だ。3人は酔って、ポリーは家庭の主婦を演じてオービルの曲にうっとり。オービルもポリーを自分の妻だと思うようになり、ディノがポリーに迫るのが許せなくなる。そして怒ってディノを追い出してしまうのだ。

オービルの家を追い出されたディノは、酒場「ヘソ」に行って飲み直している。夫とポリーが酔って家で楽しそうに踊っている場面を盗み見たゼルダが、夫の浮気にショックを受けてポリーのトレーラーハウスで酔い潰れていた。”ピストル”・ポリーという酒場の一番人気の女のトレーラーハウスを訪ねたディノは、酔い潰れたゼルダをポリーだと勘違いして迫る。ゼルダもまた歌手のディノのファンだったこともあり、二人は一夜を共にするが、同時にオービルの曲がディノにぴったりだと鼻歌を歌う。ディノもその曲を歌いながらゼルダを口説く。一方、ディノを追い出したオービルもまた、ポリーと寝室に入って一夜の共にする。策略として計画した妻と売春婦の入れ替わりが、一夜だけ現実に寝室まで入れ替わってしまったのだ。

翌日、帰ってきたポリーはゼルダと対面し、ゼルダはオービルの曲を売るために自分を追い出し、ポリーを家に呼んだ策略を理解する。ポリーは「あんな素敵な男を手放してはダメよ」とゼルダに忠告する。ゼルダはディノが置いていった大金をポリーに渡し、ポリーはその資金で人生をやり直すべく町を出ていく。

数日後、オービルはゼルダが離婚するつもりだと聞き、証人バーニーとともに弁護士事務所へ不安のまま行く。その事務所の1階の電器店に人だかりが出来ていて、ディノがテレビで自分の歌を歌っているのを聞いてビックリする。オービルはどうしてこんなことになったのか全く分からず、説明を求めるが、ゼルダは彼に「キスしてよ、おばかさん」と言うだけであった。

素敵なマイホームと一人暮らしのトレーラーハウス。家庭の主婦と酒場の売春婦。その対照的な世界の住人が一夜限り、入れ替わることで起きるハプニングと刺激。それは日常を大きく変えるほどの活性化をそれぞれにもたらす。そして自らの人生と愛を見直す契機となる。ビリー・ワイルダーは、<変装、入れ替わり、演じること>を通じて誤解と混乱のコメディを巻き起こし、これまでの価値観を揺さぶり、人と人をより強く結びつけるハッピーエンドを演出する。現代の価値観で見ると、歌手のディノはセックス依存症であり、その男に曲を売るために女性を差し出すのもセクハラだしどうかと思うが、一夜限りのスターとのセックスを楽しみつつ、夫の曲を売り出すために妻がスターを利用したとも言える。それで曲が売れ、二人の愛が深まるなら、それはそれで良しとも言えるか。


1964年製作/126分/アメリカ
原題または英題:Kiss me,Stupid

監督・製作:ビリー・ワイルダー
原作:アンナ・ボナッチ
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:アンドレ・プレビン
美術:ロバート・ラザート
キャスト:ディーン・マーティン、キム・ノヴァク、レイ・ウォルストン、フェリシア・ファー、クリフ・オズモンド
写真引用KISS ME, STUPID コピーライト 1964 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC. AND PHALANX PRODUCTIONS, INC.. All Rights Reserved
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