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2026年03月26日17:32

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「愚か者の身分」永田琴〜チンピラのバディもの〜

WBCを見るために1ヶ月NETFLIXに加入したので、2025年公開された最近の日本映画を見た。去年のベストテンにも入っていた評判が良かった作品だ。第2回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の同名小説を、向井康介が脚本を書き、人気俳優の北村匠海が主演、綾野剛と林裕太の共演で映画化。監督の永田琴という女性はまったく知らないが、脚本が向井康介ということで信頼できる。

兄貴分と弟のバディもの。チンピラのバディものとしては、私は大好きだったテレビドラマ『傷だらけの天使』の萩原健一と水谷豊のコンビを思い出す。水谷豊が萩原健一のことを「アニキ」と呼んで慕っていた。ラストは、 風邪をこじらせて死んだ水谷豊をドラム缶に入れて萩原健一が夢の島に捨てに行くという終わり方だった。アメリカン・ニューシネマのジーン・ハックマンとアル・パチーノ『スケアクロウ』(1973)も忘れ難く大好きなバディものだし、ジョン・ボイドとダスティン・ホフマンの『真夜中のカーボーイ』(1969)という情けない男たちのバディものもあった。いずれにせよ、チンピラたちの末路はたいてい、ろくでもない死に方である。

本作も、ヤクザな闇ビジネスから抜け出そうとするチンピラたちの3日間の物語であり、悲惨な終わり方をするんだろうなと思いながら見ていたら、そうではなかったことに驚いた。あえて悲惨な末路を見せず、ヤクザから逃げながら北村匠海と綾野剛は、二人で鰺の煮付けを二人で食って終わるというものだった。そして大金を手に入れた林裕太は、橋の上から、兄貴の北村匠海のことを思い出しながら川を見つめて終わる。悲惨な末路ではない終わり方なのは、時代のせいなのか?あえて、暗く重い現実的な仕打ちを見せないことで、希望を持たせたいのか?それだけ今の現実が暗いということか。ちょっと拍子抜けした。

ドブ川、橋、白いワイシャツ、魚(鰺の煮付け)が繰り返し描かれることで、兄貴と弟分の心情、絆を描いて見せた。SNSで女性を装い、身寄りのない男たちから言葉巧みに個人情報を引き出して戸籍売買を行っている闇仕事。北村匠海は、林裕太をこの世界に引っ張り込み、綾野剛は北村匠海を引っ張り込んだ責任と過去を背負っている。組織の下での闇仕事。この世界に入ることは簡単でも、裏社会から出ることは容易ではない。裏切り者には容赦ない。臓器売買も絡んで、北村匠海は角膜移植のために目玉をえぐり取られ、腎臓も取られそうになるのを、かつての兄貴分の綾野剛が助けて逃げる。人物ごとに絞って時間を前後させて構成する脚本も巧みだった。

目が見えなくなった北村匠海を綾野剛がラブホテルの浴室で裸で髪を洗ってあげる場面がいい。男二人の色気を感じさせる。また綾野剛の恋人役の木南晴夏が、生きるか死ぬかの逃走劇の最中に、電話の声で「期限切れの牛乳」を心配するやり取りもいい。木南晴夏の声の明るさが地獄の二人を救う。チンピラバディものとしてよく出来ている作品だが、最後の終わり方がキレイすぎるのが、やや納得できない。


2025年製作/130分/PG12/日本
配給:THE SEVEN、ショウゲート

監督:永田琴
原作:西尾潤
脚本:向井康介
プロデューサー:森井輝、木幡久美、下村和也
撮影:江��朋生
照明:三善章誉
美術:小泉博康
編集:宮島竜治
音楽:出羽良彰
主題歌:tuki.
音楽プロデューサー:千田耕平
キャスト:北村匠海、綾野剛、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、田邊和也、嶺豪一、加治将樹、松浦祐也
写真引用(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会
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