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2026年03月10日20:46

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「男の顔は履歴書」加藤泰〜敗戦後の闇市の混乱期の抗争劇〜

加藤泰の映画はローアングルも有名だが、アップも多い。カメラ手前にアップの安藤昇の頬に傷のある横顔が映り、画面奥にピントがボヤけた看護師の香山美子が話しかける画面から始まる。まさに履歴書である男の顔から始まるのだ。安藤昇は特攻隊に配属されて除隊となり、戦後闇市の愚連隊から安藤組という本物のヤクザを組織し、組を解散して役者になった異色俳優だ。

ビルの谷間の小さな病院、雨宮医院に交通事故の急患が担ぎ込まれる。それは雨宮院長(安藤昇)の昔の知り合い、崔(中谷一郎)という男で、柴田という日本名を持っていた韓国人だった。昭和20年、沖縄戦線で上官だった雨宮は柴田上等兵と一緒に戦った。そして終戦後、敗戦国日本は虚脱状態。その混乱に乗じて三国人たちが戦争中の恨みを晴らすように闇市で暴れ回っていた。三国人団体「九天同盟」は、全国から仲間を集め、雨宮が地主となっている日本人の闇市マーケットを乗っ取ろうとしていた。

マーケットの店主たちは、暴れ回る三国人に手を焼き、地元ヤクザに助けを求めるも、戦争に若者を取られたヤクザ(嵐寛寿郎が親分)は力がない。雨宮に助けを求めてきたが、彼も無関心だった。雨宮も敗戦で心が虚ろだった。看護師の倉本マキ(中原早苗)との関係にその虚ろな心を埋めているのだった。「九天同盟」のチンピラに菅原文太、そしてかつての雨宮の戦友・崔(中谷一郎)もいた。雨宮の弟の俊次(伊丹十三)が血気にはやり、仲間とともに「九天同盟」に殴り込みをかけるが、捕らえられてしまう。俊次に思いを寄せる韓国人の李恵春(真理明美)は心を痛め、彼を助けようとする。崔もまた雨宮のために組織を裏切り、俊次を逃がそうとするが、俊次と李恵春は逃げる途中で殺されてしまう。折り重なって死ぬ二人。争いと憎しみの連鎖はキリがないと無関心だった雨宮も、弟が殺されて仇を晴らすために単身、「九天同盟」に立ち向かっていく。マーケットでの市街戦の末、「九天同盟」は壊滅。雨宮も8年の刑期を服役したのだった。そして小さな病院を細々とやっていた雨宮は、再び崔と再会し、彼の娘と妻に会う。その妻はかつての雨宮の恋人・倉本マキ(中原早苗)だった。

戦後の闇市の混乱と日本人の虚脱状態、そしてアメリカ進駐軍に押さえつけられている中で、三国人が新たな勢力として暴れ回る時代が描かれている。恨みは繰り返される。戦争中の三国人の日本人への恨み、そして多くの人を戦争で殺された恨み。混乱の中で愚連隊やヤクザがやがて闇市を仕切るようになっていく。冒頭で「この映画は敗戦後の日本の混乱した時代に想定したフィクションである。そして世界中の人間が互いに愛し合い、信じ合える日を信じて作られたドラマである」という大仰な字幕で始まる。


1966年製作/89分/日本
配給:松竹

監督:加藤泰
脚本:星川清司
製作:升本喜年
撮影:高羽哲夫
美術:梅田千代夫
音楽:林光
録音:小尾健彦
照明:青木好文
編集:石井巌
キャスト:安藤昇、伊丹十三、中原早苗、中谷一郎、真理明美、菅原文太、嵐寛寿郎、香山美子、浜田寅彦、柳沢真一、若宮大祐、川辺健三、田中春男、角梨枝子、沢淑子、石井トミコ、志賀真津子、内田良平、富田仲次郎、宮敬二、滝佐太郎、萩原満、土田佳司、関口銀三、土紀洋児、松本染升、三島雅夫
写真引用コピーライト1966 松竹株式会社
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