アガサ・クリスティの短編小説及び戯曲『検察側の証人』を原作とする法廷ミステリー作品をビリー・ワイルダーが映画化。原題Witness for the Prosecutionも「検察側の証人」。見事なストーリー展開であり、演出のビリー・ワイルダーも素晴らしい。法廷ミステリーのお手本のような名作だ。
マレーネ・ディートリッヒが容疑者タイロン・パワーの年上のドイツ人の美人妻クリスチーネを演じている。まさにクール・ビューティー。本作を演じたときは56歳だったそうだが、やはり色気もあり美しい。戦時下のドイツの酒場で歌うシーンもある。また法廷で感情を取り乱す場面もあり見応え十分。さらに老弁護士ウィルフリッド卿役にはチャールズ・ロートン。カルト的名作『狩人の夜』(1955)の監督も務めているが、本作は貫禄たっぷりのしたたかな老弁護士役だ。さらに病気で退院したばかりの老弁護士の口うるさい付き添い看護師役を演じるのが、実生活のロートン夫人であるエルザ・ランチェスターが扮した。葉巻の争奪やココアと偽ったブランデー入りの水筒、休息や薬をめぐるやり取りなど、病気をめぐる二人の掛け合いが面白く笑いを誘う。1階からから2階へ自動で行ったり来たりして移動する昇降機も面白い演出に一役買っている。さらに、老弁護士のロートンは、片眼鏡を光で反射させて相手が真実を言っているか確かめるテクニックをいつも使っており、それをマレーネ・ディートリッヒは窓のブラインドを降ろして封じてしまう二人の駆け引きなどもニクい演出だ。
どんでん返しがある物語なので詳細は書かないが、実に良く出来ている法廷劇。ロンドンで、裕福な未亡人の刺殺事件が起きる。容疑の疑いがかけられたレナード(タイロン・パワー)は、ロンドンきっての敏腕弁護士ウィルフリッド卿に弁護を依頼する。しかし、唯一のアリバイを証言する妻クリスチーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が、検察側の証人に立ち、思いもよらないことを口にする……。
タイロン・パワーの軽いお喋りと女性を手玉にとる器用さが映画と上手くマッチしている。ビリー・ワイルダーの細かい演出が、緻密なストーリー展開と相乗効果を上げている法廷ミステリーの名作だ。ビリー・ワイルダーは『深夜の告白』((1944)、『失われた週末』(1945)、『サンセット大通り』(1950)、『第十七捕虜収容所』(1953)、『麗しのサブリナ』(1954)、『七年目の浮気』(1955)、『翼よ!あれが巴里の灯だ』(1957)、『昼下がりの情事』(1957)、そしてこの『情婦』(1958)。さらに傑作『お熱いのがお好き』(1959)、『アパートの鍵貸します』(1960)、『あなただけ、今晩は』(1963)、『ねぇ、キスしてよ』(1964)、『恋人よ帰れ!わが胸に』(1966)、『お熱い夜をあなたに』(1972)、『フロントページ』(1974)など、名作を挙げたらキリがない。どれも誰もが楽しめる映画に仕上がっているところが凄い。
1957年製作/117分/G/アメリカ
原題または英題:Witness for the Prosecution
監督:ビリー・ワイルダー
製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr.
原作:アガサ・クリスティ
脚本:ビリー・ワイルダー、ハリー・カーニッツ
撮影:ラッセル・ハーラン
音楽:マティ・マルネック
美術:アレクサンドル・トローネル
キャスト:タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒ、チャールズ・ロートン、エルザ・ランチェスター
写真引用Photofest/AFLO
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