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2025年12月24日12:32

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「星と月は天の穴」荒井晴彦〜男の観念性が女性たちによって滑稽に暴かれる〜


吉行淳之介の同名小説の映画化である。いいタイトルである。「月は天の穴」と言いながら、月面着陸のニュース映像をあえて入れている。1969年の時代設定なのだ。月のリアリズムが男と女のロマンティシズムを壊していく。「天の穴」とは女性性器の暗喩だろうか?それとも男の心の中にぽっかりと空いた穴のことだろうか?いずれにしても、つまらない男の観念性や自意識やプライドが簡単に砕け散るコメディ的な映画である。

荒井晴彦は、ベテランの脚本家であるが自ら監督した作品は、『身も心も』(1997)以来、徹底して男女の性愛にこだわってきた。柄本佑と瀧内公美の『火口のふたり』(2019)、同じ綾野剛主演の『花腐し』(2023)では霊界の女まで登場させたことが強く印象に残っている。今回はあの作品に比べると、軽いコメディ的な要素もある男女の性愛と男の滑稽さが描かれている。

妻に逃げられ独身のまま40代を迎えた小説家の矢添克二は、執筆中の恋愛小説の主人公に自分自身を投影させ、「精神的な愛の可能性」を自問するように小説を書いている。その小説が万年筆で文章にされ、字幕でも表示され、現実に矢添克二(綾野剛)の現実にもB子(岬あかり)が登場し、「散歩だけの関係でいよう」と提案したりする。一方で、娼婦館で馴染みの千枝子(田中麗奈)を「道具のように」買い、画廊で出会った女子大生の瀬川紀子(咲耶)と彼女の粗相をきっかけに性的関係を持つようになる。彼女から再三「私はあなたのなんなの?」と問われ、「雌犬だ」と動物的な性愛関係でしかないと男は女を突き放そうとする。

1969年の時代設定とは言いながらも、ジェンダーレスやミソジニーが問題になる現代の映画にあって「どうなの?」と問う人もあるだろうが、小説家が持っている「あるコンプレックス」によって「笑い」に変えてしまう映画なのだ。妻に逃げられた過去をいつまでも引きずっていて、妻が男の気配を持ちながら、家の前のブランコに乗っていたイメージが何度も繰り返されて挿入される。それ以来、住んでいる家の前の公園にも足を踏み入れられない男。そして、自分の部屋にも女を入れたくない頑なさを持っている男である。そこには自らのコンプレックスである「秘密」を知られたたくないという自意識が反映している。

モノクロ映画でありながら、瀬川紀子の肩の赤い糸や信号、お腹の傷、B子の赤い口紅、入れ歯の歯茎の色、手紙をポストに入れる少年の赤い舌などが時折ドッキリするようなパートカラーで描かれる。冒頭とラストの橋、公園、ブランコなどのシチュエーションを巧みに使いながら、男の観念性を滑稽なものとして浮かび上がらせる女たちが魅力的だ。特に娼婦を演じた田中麗奈が見事だった。初めて外で一緒に過ごすことになったときの喜び、そしてブランコでの別れ。言葉ではない何かを伝えていた。そしてどんどん変化していく女子大生の瀬川紀子を演じた咲耶も見ていて面白かった。


2025年製作/122分/R18+/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ

監督・脚本:荒井晴彦
原作:吉行淳之介
エグゼクティブプロデューサー:小西啓介
プロデューサー:清水真由美、田辺隆史
撮影:川上皓市、新家子美穂
照明:川井稔
録音:深田晃
美術:原田恭明
編集:洲��千恵子
音楽:下田逸郎
主題歌:松井文
インティマシーコーディネーター:西山ももこ
キャスト:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
☆☆☆☆4
写真引用(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
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