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2025年12月18日16:58

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「崖」フェデリコ・フェリーニ〜詐欺師の男たちの背徳と魂の救済〜

久しぶりにフェリーニの映画を見た。未見だった初期作品。映画史上有名な『道』(1954)の翌年に作った作品。フェリーニはスタジオで巨大なセットを組んで独自の世界観を構築して撮影するスタイルが多いが、初期作品はロケ中心の貧しき生活を見つめたイタリア・ネオレアリズモ映画の流れから出発している。

そんな貧しき庶民たちを騙す詐欺師の男たちの物語だ。神父の恰好をした中年の男アスグスト(ブローデリック・クロウフォード)、画家志望で軽妙な語りのピカソ(リチャード・ベイスハート)は、 ロベルト(フランコ・ファブリッツィ)やヴァルカス(ジャコモ・ガブリエッリ)たちと組んで、善良で貧しい村人たちから金銭を騙し取っていた。事前に埋めておいた骸骨とニセの金品を掘り起こして、土地の所有者にニセの金品を譲る代わりに、魂を救済する為に寄付するお金をせしめるというやり口だ。宗教を騙った非道な詐欺師たち。さらに公営住宅の申し込みをしてなかなか割り当てが貰えない人々の心につけ込み、前金を払えば入居出来ると嘘を騙って金を騙し取る。そんなろくでもない詐欺師たちの姿と彼らにも家族がいて、その愛する家族のためにこんな仕事を止めようと思いつつも止められない哀れな男たちが描かれる。画家志望のピカソの妻がジュリエッタ・マシーナ。可愛らしい純真な奥さんだ。そして幼い娘もいる。さらにアウグストにも別れて暮らす妻のもとに美しい高校生の娘がいた。

年末のある夜、アウグストは高級車に乗った旧友のリナルド(アルベルト・デ・アミチス)と再会し、年越しパーティーに誘われる。アウグストはピカソとその妻イリス(ジュリエッタ・マシーナ)を連れてパーティーへ。富裕層たちの豪華なパーティー描写はフェリーニの得意とするところ。ここでも金持ちたちの乱痴気騒ぎを見事に演出している。そしてアウグストとピカソの友人で仕事仲間である ロベルトが夫人の純金製のシガレットケースを盗もうとしてバレてしまい、恥をかかされる。妻のジュリエッタ・マシーナは、夫の仕事仲間が盗みをしたことで、いつも夫も人を騙して金を巻き上げるような仕事をしていることに気づいてしまう。泣きながら、「悪い仲間たちとはもう会わないで」と懇願する妻だったが、夫のピカソは仲間からなかなか抜けられない。娘と道で再会し、丘の上でランチをして娘の将来のことを心配するアウグストもまた、娘と一緒だった映画館で詐欺の被害者の男と会うことで、娘の前で警察に捕まってしまう。「パパ・・・」と言いながら涙する娘。

ラストは、いつもの骸骨と金品を埋めた手口で金を騙し取ろうとするアウグストたちだったが、その家の小児麻痺で不自由な暮らしをしている少女と、その少女のために働きづめの姉がいる家庭で、貧しくも必死で生きているその純粋な少女の姿に心が揺れる。アウグストは、「あの家族から金を取らなかった」と嘘を言い、仲間割れとなって崖下へと追い詰められ、石を投げられ負傷したまま動けなくなってしまう。崖下に放置されたアウグストが最後に見たのは、貧しいながらも働いて生活している小さな子どもたちがいる家族の姿だった。

宗教を騙る詐欺師という背徳な男たちと、そんな男たちにも愛する家族がいて、そんな家族に顔向けできない良心の葛藤が描かれる。純粋無垢なる娘や病気の少女を登場させることによって、欲得にまみれた俗世間の空しさと男たちの魂の救済を描こうとしている。

乱痴気騒ぎの夜とその翌朝の空しさ、誰もいない夜の町を歩きながら空虚な自分たちと向きあう姿を描くのがフェリーニは得意だ。代表作の『甘い生活』(1960)もまたそんな夜のパーティーと翌朝の空しさが印象的だった。それでも男たちはくだらない乱痴気騒ぎを止めることができない。


1955年製作/112分/イタリア・フランス合作
原題または英題:Il Bidone
配給:コピアポア・フィルム

監督:フェデリコ・フェリーニ
脚本:フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ
撮影:オテッロ・マルテッリ
音楽:ニーノ・ロータ
キャスト:ブロデリック・クロフォード、リチャード・ベースハート、フランコ・ファブリッツィ、ジュリエッタ・マシーナ、ジャコモ・ガブリエッリ、アルベルト・デ・アミチス
写真引用コピーライトTITANUS 1955
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