クリスマスに見るべき映画といえば、この作品だろう。歴史的名作だ。フランク・キャプラは、『或る夜の出来事』(1934)と本作と同じように早口でまくし立てるジェームス・スチュアートと組んだ『スミス都へ行く』(1939)という名作を残したが、この『素晴らしき哉、人生!』(1946)もまた、誰もが見るべきハリウッド映画の感動作であり、傑作であろう。
人間の性善説を信じて映画にしたような作品であり、クリスマスの夜に絶望の淵に立たされた男のもとに天使が現われる奇跡のような物語だ。「ベルの音は天使が羽をもらった合図だ」というのもクリスマスらしくていい。
雪が降りしきる夜、暗い川を見つめて橋の上に立つ男。そこに羽のないオジサン天使が川に飛び込む。川に飛び込んだ人間を助けようとして自殺を思い止まらせる。人間は利他的な存在なのだという前提がそこにはある。子供の頃にジョージは、氷の川に落ちた弟を助けるために飛び込んで、左耳が聞こえないという障害を負った。川に飛びんで人を助けるというアクションが最初にあり、最後に反復された訳だが、その時、耳の障害を負ったことが彼の人生に大きな影響を及ぼす。彼が健康そのものであったなら、きっと町を離れ、自らの希望通り世界を飛び回っていただろう。戦争に徴兵されなかったのも、耳の障害があったからだ。人は何か弱みや欠損を抱えていた方が、他者に優しくなれるものだ。水に飛び込むアクションは、メアリー(ドナ・リード)との出会いのシーンでも反復される。高校の卒業記念パーティでのダンスシーンだ。友人たちのイタズラでダンスフロアの床が開き、プールにジョージとメアリーは落ちる。水に落ちてズブ濡れになることが、彼の人生の転機につきまとい、反復されるというわけだ。
ジョージとメアリーがズブ濡れになって、借り物の服を着て夜道を歩くシーンがこの映画の唯一のラブシーンだ。願い事を祈りながら、廃屋の屋敷に石を投げる二人。それが結局は、メアリーに夢を自覚させ、実現させる力になったのだ。貧しい人々が家を持つための小さな住宅金融会社を父から仕方なく受け継ぎ、メアリーとの結婚式に日に会社が破綻寸前に陥ったときも、ハネムーン費用をつぎ込んで、ピンチの切り抜ける。そしてメアリーは、廃屋だった屋敷を改装して住み始めたのだ。あのときの夢を実現させるために。
ジョージがいない世界を羽のない2級天使のクラレンス(ヘンリー・トラバース)がジョージに見せるとき、町がネオンでいっぱいの繁華街となっており、バーやナイトクラブ、ダンスやショー劇場などで溢れているのも面白い。華やいで賑やかに栄えている町にも思えるが、それはジョージがいた世界ではなく、町の実力者で金儲けのことしか考えていないヘンリー・ポッター(ライオネル・バリモア)が牛耳って作り上げた町なのだ。欲望と金にまみれた資本主義社会への批判がここにはある。思いやりや優しさを失った欲望に駆られて行動する自己中心主義の世界。ジョージがクリスマスの夜に、熱を出して寝ていた末娘ズズとのやり取りで、こっそりポケットに隠した「ズズの花びら」が見つからないという演出も上手い。現実の世界にジョージが戻ったとき、町には映画館や百貨店があり、廃屋だった屋敷にはクリスマスの飾り付けがあり、子どもたちと妻がただいるそばにいるだけのことが、どれだけ幸福なことなのかを思い知る場面は、涙なくしては見られない。
クリスマスの雪の夜に駆けつける友人たちの善意。それはジョージに救われた人々たちの恩返しであった。大合唱の歌とともに理想的な善意でつながる世界が夢のように描かれて映画は終わる。傲慢で邪悪なる世界が広がりつつあるなかで、クリスマスぐらい夢のような希望を感じたい人は、是非この映画をご覧あれ!
1946年製作/130分/G/アメリカ
原題または英題:It's a Wonderful Life
監督・製作:フランク・キャプラ
原作:フィリップ・バン・ドレン・スターン
脚本:フランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット、フランク・キャプラ
音楽:ディミトリ・ティオムキン
キャスト:ジェームズ・スチュワート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、トーマス・ミッチェル、ヘンリー・トラバース、ボーラ・ボンディ
ウォード・ボンド、フランク・フェイレン、グロリア・グレアム、H・B・ワーナー、フランク・アルバートソン
☆☆☆☆☆5
写真引用TM,

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