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2025年11月05日16:54

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「訪問、あるいは記憶、そして告白」マノエル・ド・オリヴェイラ〜自伝的ドキュメンタリー〜

「オリヴェイラ2025 没後10年マノエル・ド・オリヴェイラ特集」5作品をデジタル・リマスター版で一挙上映ということで、これまで観ていなかったポルトガルの巨匠オリヴェイラ映画を劇場で観た。『アブラハム渓谷』(1993)に続いて観たのは、自伝的ドキュメンタリー『訪問、あるいは記憶、そして告白』(1982)だ。

オリヴェイラ監督が73歳だった1981年に製作を開始し、自らの死後に公開することを望んだという自身のドキュメンタリー。結局、オリヴェイラは106歳まで生きたので公開は製作から34年後の2015年となった。彼がなぜ73歳で自分に関する人生のドキュメンタリーを撮ったのか。それは、彼自身が妻と結婚してから40年近く住み、円熟した人生を過ごした家を負債のため手放さざるを得なかった事が関係していると思われる。オリヴェイラにとって家、屋敷は、彼の人生そのものだったのだろう。彼の映画にあって、舞台となる屋敷は時間を超えた変わらぬものとしてそこにあり続ける。何代もの家族の人生を見続けてきたのが家であり、屋敷だ。肖像画や額に入った家族の写真もよく飾られているが、そんな先祖代々の人々の魂が宿っているのが家であり屋敷なのだ。森や林、渓谷や川などとともに、堅牢な建物は家族の歴史の時間そのものなのだ。

冒頭、クレジット・タイトルは表示されず、オリヴェイラの声がスタッフを紹介していく。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番が使われることも伝えられる。鳥たちの鳴き声と庭の樹木たちに迎えられ、大樹に咲いた一輪の花のアップがあり、庭の扉が自然と開き、カメラは庭を進んでいく。玄関ドアの扉も誰かが招き入れたかのように自然と開いて、以前に晩餐に招かれたお礼のためにやってきた男女の声とともに部屋の中をカメラは移動していく。「出直しましょうよ、なんだか怖いわ」という女性の声もあるが、カメラは部屋の中を手持ちカメラで進んでいく。カメラマンの床を踏む足音が少し聞こえる。「1階で物音がする」という声に呼応するように、タイプライターで文字を打つ男が映し出され、幽霊のようにオリヴェイラ自身が登場し、カメラの方を向いて自らのこと、家族のことを語り始める。

見えない男女の声の台詞を書いたのは、女性作家アグスティーナ・ベッサ=ルイス。『アブラハム渓谷』の原作者でもある。オリヴェイラの父はもともと事業家で、繊維工場を経営しており、いわゆる裕福なブルジョア家庭で彼は育っている。時々、オリヴェイラ自身によって書斎の16ミリ映写機で家族の記録映像を上映しながら、思い出を語ってゆく。妻のマリア・イザベル自身も花畑の中で登場し、夫の映画製作に協力してきたことなどを語る。そしてファシスト時代の1963年、秘密警察に家宅捜索され、逮捕された思い出も語られる。映画上映会での彼の発言が「当局の気に障った」らしいのだが、ハッキリしないようだ。このエピソードは、車で連行され、左派の作家のウルバノ・タヴァレス・ロドリゲスも一緒にリスボンの刑務所に入れられたことなどが再現劇で描かれる。1974年のポルトガルの無血革命(カーネーション革命)で独裁政権が倒れたが、オリヴェイラは父から相続していた繊維工場で労働者たちが工場を占拠する事件もあり、次第に財政難に陥いっていく。そして負債を抱え続けて、この家を手放さざるを得なくなったのだった。

オリヴェイラは独裁政権が倒れてから、映画を多作するようになる。なんと60歳を過ぎてから本格的な映画監督の仕事が出来るようになったのだ。1980年代に入り70歳を過ぎてからは1年に1作に近いペースで新作を撮り続けた。このドキュメンタリー後に製作された作品は30本近くある。2014年には、105歳で『レステルの老人』を撮りあげ、これが遺作となり、2015年104歳で亡くなった。

「虚構とは映画の真の現実だ」と彼は言う。この虚構めいた自伝的ドキュメンタリーは、彼の人生を振り返る遺言のようにして撮られたものだろうが、結局は数多くの虚構をその後も作り出し、その旺盛な創作力で人々を驚かせ続けた。映画の最後は、新作を執筆中のタイプライターの音が響き、夫妻の仲睦まじい写真の数々、幼少時代のオリヴェイラ自身の写真などが映し出され、フィルム映写機が終わってカラカラと回る音とともに、リールが外れ画面が真っ白になって映画は終わる。

1982年製作/68分/G/ポルトガル
原題または英題:Visita ou Memorias e Confissoes
配給:プンクテ

監督:マノエル・ド・オリヴェベイラ
製作:マヌエル・グアニーリョ
脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ、アグスティーナ・ベッサ=ルイス
撮影:エルソ・ロケ
編集:マノエル・ド・オリヴェイラ、アナ・ルイーザ・ギマランイス
声:テレーザ・マドルーガ、ディオゴ・ドリア
キャスト:マノエル・ド・オリヴェイラ、マリア・イザベル・ド・オリヴェイラ、ウルバノ・タバレス・ロドリゲス
☆☆☆3
写真引用(C)Cineastas Associados, Instituto Portuges de Cinema



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