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2025年10月07日19:58

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「憂鬱な楽園」ホウ・シャオシェン〜彷徨うチンピラたちを長回しと音楽で描く〜

ホウ・シャオシェン特有のヒキの長回しを多用しているため、人物のアップがなく、登場人物を把握しにくい。こういい映画はやはり映画館で観ないとダメだ。テレビの小さいモニターだと、映画に入り込めない。

冒頭から列車のシーンだ。ホウ・シャオシェンがいつも描く大好きな列車。トンネルに入ったり出たり、車内の光の明暗があり、主人公のチンピラのガオ(ジャック・カオ)が真ん中にいて電話で誰かと話している。この映画でガオはいつも電話で誰かと話している。その後ろに弟分のピィエン(リン・チャン)とその恋人のマーホァ(伊能静)がくっついている。ビートのきいたロック調の音楽に乗せて、過ぎ去る線路が映し出され、映画タイトル「南國再見、南國」が出て、田舎の小さな駅に降り立つ。このビートのきいた音楽が映画の随所に挿入される。車窓風景、車やバイクの移動風景が長々と映し出され、音楽が流れる。映像は赤や黄色のフィルター加工映像もあり、走るバイクを車の後部から映し続ける映像もある。彷徨う3人のチンピラ男女のロードムービーであり、ミュージックビデオのようでもある。

住宅や商店が線路のすぐ脇に立っている台湾の田舎の列車の風景。ホームもないような駅に着き、ガオの仲間たちとのやり取りが続くが、ほとんどヒキの映像の長回しだ。若いピィエンとマーホァが画面を自由に動き回る。飯を食べながら、列車が駅に着くのを眺めたりしている。ご飯茶碗を持って、うろつきながらおかずを頬張る食事シーンが何度も出てくる。食卓について落ち着いて食事するような奴らじゃない。常にフラフラしているチンピラたちの話だ。

たいした物語があるわけではない。中年になってもフラフラしているガオ。ガオの兄貴のシイのもとで博打の胴元をやったり、ヤクザな金稼ぎ仕事をしている。ガオの弟分ピィエンは喧嘩っ早く、トラブルばかり。マーフォアはホストクラブに100万元の借金もあるようだ。食堂をやっているガオはいつか上海あたりでレストランを出して一旗揚げようと思っているが、資金の当てはない。ガオの恋人アインはアメリカで生活したいと言うが、英語も出来ないガオは行く気もないし、彼女にプロポーズをする甲斐性もない。自堕落に過ごす日々。「恋人はレストランをやれというけれど、占いで前途多難だからできない」なんて情けない男の一面を見せるガオ。そんなとき、ピィエンの一族の土地売却の話があり、ガオとピィエンとマーホァの三人は、車で南の地・嘉義に向かう。自分の取り分を受け取りに来たピィエンだったが、いとこが取り仕切っていて、家を出たっきりのチンピラのピィエンは蚊帳の外。彼に分け前は無かった。喧嘩になるが、警官である従兄弟にピィエンは打ちのめされてしまう。拳銃を手に入れて復讐しようとするピィエンだったが、ガオもピィエンもその動きを知られてしまい、留置所に入れられてしまう。ガオの兄貴のシイと地元の大物の仲立ちで、ようやく留置所から出られた二人。ガオとピィエンとマーホァの三人は車の鍵を投げ捨てられ、暗闇の中を懐中電灯で鍵を探して、台北に帰る。しかし明け方、車は畑の中に突っ込んでしまい立ち往生。3人の暗澹たる未来のように、行き詰まったところで映画は終わる。

列車、車、バイクによる移動映像が彷徨う3人の心のありようを浮かび上がらせる。根無し草、行き場のない中途半端さ。カットを割らず、ヨリで人物の顔を見せず、ロングショットのまま、彼ら3人の姿を描く。省略も多く、物語は分かりづらい。映像の突き放した感じが、彼らの空虚感を画面から創出する。彷徨う若者たちという映画は、後に作った『ミレニアム・マンボ』(2001)につながっている。


1996年製作/112分/台湾・日本合作
原題または英題:南國再見、南國 Goodbye, South, Goodbye
配給:松竹富士

監督:ホウ・シャオシェン
製作:水野勝博、市山尚三、ホァン・チェン、キン・ジェウェン、シェ・ピンハン
製作総指揮:ヤン・タンクェイ、奥山和由
脚本:チュー・ティエンウェン
撮影:リー・ピンビン、チェン・ホァイエン
音楽:リン・チャン
キャスト:ジャック・カオ、リン・チャン、伊能静、シュウ・グイイン、キン・ジェウェン、リェン・ピートン、リー・ティエンルー
☆☆☆3
写真引用(C)1996 松竹株式会社・FFEIII
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