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2025年08月27日17:39

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「やくざ絶唱」増村保造〜報われぬ近親相姦的な兄妹愛〜

勝新太郎の現代劇だ。ヤクザの兄と堅気で真面目な高校生の妹との近親相姦的な兄妹愛の物語だ。増村保造監督は、1972年でも三島由紀夫原作で兄妹の近親相姦愛を描いた『音楽』を撮っている。タブーを超えた情念的な愛に惹かれるものがあるのだろう。

勝新太郎は妹の大谷直子を溺愛している。二人は異父兄妹で、勝新太郎は他者を遠ざけ、大谷直子の実父(加藤嘉)にも会わせないようにして、小さい頃から妹の面倒を見て暮らしてきた。勝新太郎には一緒に暮らしている情婦(太地喜和子)がいるのだが、二人の関係は彼女も入り込めないほどで、隣に妹が寝ているため彼女を抱くこともしない。勝新太郎演じるヤクザの暴力性は迫力満点だ。喧嘩に強く、妹に近づく男は殺ししていまいそうな凶暴さだ。そんな兄の気持ちを分りつつ、妹の大谷直子も兄に愛情を持っている。しかし、兄の元から離れて自立しなければいけないとも思っている。そしてあるとき、言い寄ってきた教師(川津祐介)に、処女を奪ってもらうために彼のアパートに行く。一度だけの関係と割り切って、兄の庇護から抜け出そうとする。そんな妹の行動に怒り狂い、情婦とも別れ、チンピラたちや警官と喧嘩をして刑務所に入ることになる。「おにいちゃんとは別々に自分で生きていく」と言う妹とはもう一緒にいられないため、自ら刑務所に入るのだ。

ところが勝新太郎は、組の対立するヤクザの男の始末をつける親分からの約束を果たせないまま刑務所に入ってしまったため、意気地がないと同じ組の者に陰口をたたかれてしまう。大谷直子の父が死に、その養子の田村正和が彼女に近づいてくる。膨大な父の遺産相続のことを話しているうちに、二人は惹かれ合うようになる。そのことを刑務所で聞いた勝新太郎は、妹への思いを抑えきれず、保釈で再び出てくる。私生児である妹へ遺産を払わないという義母から1千万円を妹のために奪い取るのだ。そして田村正和が「妹さんと結婚させてください」と挨拶に来ても、別れろと凄む。すると大谷直子は、自らも兄への愛を告白しつつ、兄を短刀で殺して自分も死ぬと言い出す。兄を殺すことでしか、報われない兄妹愛。「お前を死なすわけには行かない」と言って家と飛び出し、勝新太郎は田村正和に「妹を幸せにしろよ」と言い残して、敵対するヤクザを殺しに行くのだった・・・。

全体的に暗い色調。まだ幼い大谷直子の舌っ足らずな演技は気になるが、女を武器にしたしたたかさも見せ、色気たっぷりに男たちに迫っていく。寝ている大谷直子の体を撫で回す勝新太郎。寝ているフリをしてそれを受け入れている大谷直子。兄にプレゼントされたピンクの財布を寝床で秘かに喜んで眺める大谷直子。そして刺し違えようとする妹と兄の狂気の愛。増村保造監督らしい報われぬ、どうにもならない情念の愛がほとばしる。


1970年製作/92分/日本
配給:ダイニチ映配

監督:増村保造
脚本:池田一朗
企画:藤井浩明、林万夫
撮影:小林節雄
美術:矢野友久
音楽:林光
録音:須田武雄
照明:渡辺長治
編集:中静達治
キャスト:勝新太郎、大谷直子、田村正和、加藤嘉、荒木道子、川津祐介、青山良彦、太地喜和子、早川雄三、内田朝雄、中条静夫、橋本力、平泉征、中田勉
☆☆☆3
写真引用コピーライト1970 KADOKAWA
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