mixiユーザー(id:3912568)

2025年08月25日13:18

58 view

「ローマで夜だった」ロベルト・ロッセリーニ〜戦時下の闇と屋根裏の夢〜

イタリアン・ネオリアリズモの先駆者の一人で、ヌーヴェル・ヴァーグの父とも呼ばれているロベルト・ロッセリーニ監督の1960年の作品。先ごろ、『ドイツ零年』(1948)も観たが、素晴らしい映画だった。

第二次大戦下の1943年9月、イタリアと連合軍の休戦が発表され、何万人もの連合軍捕虜が収容所を脱走し、イタリア中を彷徨った。ドイツ軍は、連合軍の捕虜を助けたイタリア人は銃殺すると告げていた。それでも捕虜を匿うイタリア人は多くいた。それはキリスト教の慈悲の心からだったというナレーションが冒頭で入る。

修道尼に変装して闇商売をやっているローマ娘エスペリア(ジョヴァンナ・ラッリ)は買出しの途中、収容所を脱出した連合国側の三人の捕虜−英陸軍少佐ペンバートン(レオ・ゲン)、米空軍中尉チャールス(ピーター・ボールドウィン)、ソ連戦車隊軍曹イヴァン(セルゲイ・ボンダルチュク)と会い、窮状を見かねて自分の家の屋根裏部屋に隠した。

夜の暗闇のシーンが多い。トラックの荷物に隠れ、人目を避けて匿われる3人の捕虜たち。そして屋根裏部屋も蝋燭の光のみだ。最初は、すぐに出ていってもらおうとしていた迷惑顔のエスペリアだったが、次第に捕虜たちとの関係が生まれてくる。エスペリアの恋人であるレナート(レナート・サルヴァトーリ)も協力する。イギリス人、アメリカ人、ロシア人という国の違う3人の捕虜とイタリア人の男女が、言葉があまり通じなくても仲良くなるという戦時下において理想的な世界を描いている。屋根裏部屋で繰り広げられる夢のような時間。これが描きたかったのだろう。

屋根裏部屋には、古く使われなくなったキリスト教の人形たちが放置されていた。それをクリスマスの夜に連合軍の捕虜たちが飾り立てエスペリアを喜ばせ、パーティーで5人が手を繋いで歌い踊る場面(引用写真)がこの映画のもっとも美しい場面だ。歌い踊る曲は日本人にも馴染みのある「蛍の光」のメロディ(スコットランド民謡)だ。エスペリア演じるジョヴァンナ・ラッリは、キリッとした美しさ。怒ったり、優しくなったり、気分がコロコロと変わるところが面白い。「待って、帰るの?」と言って恋人を引き留めてキスしたかと思うと、冷たくて「もう帰って」と突き放す。戦時下に捕虜を匿っている不安定な女性の心理をうまく表現している。「男は戦争とドイツ軍に夢中で、女は娼婦なの?」と恋人に言い放つ台詞もある。

暗闇が支配する戦時下のローマにあって、屋根裏から見えるサンピエトロ寺院の塔、夜が明けてこの場所がローマだと知った捕虜たちの喜びのシーンが印象的だ。暗闇や密室で逃げ隠れしてきた捕虜たちにとって、光や窓や空や屋根は希望の道筋なのだ。この隠れ家に危険が迫ると、捕虜たちは屋根づたいを逃げる。

何よりも驚かされるのが、カメラの長回しだ。カットを細かく割らずに、動きに合わせた自然なパンやズームなどを使い、人物たちの部屋の出入り、明かりが突然点いて消したり、動きや演技を中断させることなくワンカットで撮っている。クリスマスの夜、一度別れを告げた捕虜たちが危険なためアパートに戻ってきて、二人の捕虜を屋根裏に戻し、恋人二人が抱き合う場面の長回しでは、鏡を巧みに使って見事だ。また、密告した卑怯な男タルチジオがやってきてエスペリアを「一緒にベニスに逃げよう」と誘い、死んだ恋人のことを言われてエスペリアが怒りのあまり鍋の熱湯を浴びせ、奥の部屋に隠れていたイギリス人のペンバートン少佐がタルチジオを扉の向こうで殺し、その男の倒れた脚だけを見せ、その後の動揺したエスペリアのアップや少佐のアップまですべてワンカットでやっているのだ。さらにさらに、その男の死体を牧師に見てもらい、奥の部屋のベッドに横たわる死体を映しつつ、エスペリアが恋人を助けるためにドイツ軍に捕虜たちがいることを密告したと自ら謝罪し、「自分は悪魔よ」「もう耐えられない」と悲嘆に暮れ、牧師が窓外の気配で連合軍がローマに来たことに気づくまでもワンカットも長回しなのである。重要な芝居どころのシーンは、すべてワンカット長回しなのだ。その自然なカメラワークと、役者たちの自然で巧みな演技力に驚かされる。

生活感溢れる路地を少女が走ってくる場面などリアリティ溢れる市民たちの暮らしのドキュメンタリー的な映像と捕虜たちが屋根裏に隠れているフィクション的世界が見事に融合した作品だ。

1960年製作/イタリア
原題または英題:Era Notte a Roma
配給:イタリフィルム

監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚色:セルジオ・アミディ、ディエゴ・ファッブリ、ブルネッロ・ロンディ、ロベルト・ロッセリーニ
原案:セルジオ・アミディ
製作:フランコ・マグリ
撮影:カルロ・カルリーニ
美術:Elavio Mogherini
音楽:レンツォ・ロッセリーニ
キャスト:ジョバンナ・ラッリ、レオ・ゲン、セルゲイ・ボンダルチュク、レナート・サルバトーリ、ハンネス・メッセマー、ピーター・ボールドウィン、iパオロ・ストッパ、フランコ・ロッセリーニ
☆☆☆☆4
写真引用コピーライト 1960 STUDIOCANAL / COMPASS FILM - All Rights Reserved

0 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2025年08月>
日 月 火 水 木 金 土
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31