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2025年08月11日17:02

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「東京の合唱(コーラス)」小津安二郎〜アクションの反復と同調のコメディ〜

小津の無声映画、夫の失業と家族もの。「それまでのハリウッド映画完全再現指向を捨て、日本の風土の中でそのテクニックを充分に生かし始めた、転換点とでもいうべき作品。」(映画ナタリーより)という解説もある。確かに前年の『その夜の妻』(1930)は、原作オスカー・シスゴールとあるように、いかにもハリウッド調の犯罪サスペンス劇だった。それに比べて、本作は日本の家族劇であり、当時の失業者が多くいた不況時代を描いている。

最初は学校の体育の教練風景から始まる。スラッと背の高くチョビ髭の体育の先生の斎藤達雄が、ポケットから取り出したメモ帳片手に鉛筆ナメナメ生徒たちをチェックする。生徒たちの制服の着方から整列、行進まで指導している。遅刻してきた生徒が先生の仕草をこっそり真似したり、舌を出したりして、コメディ的演出で先生の斎藤達雄はからからわれている。その不真面目な生徒の一人が保険会社の内勤としてサラリーマン(岡田時彦)になって働いている。現在は妻(八雲恵美子)と姉(高峰秀子)と弟の四人で暮らしている。会社はボーナス支給日。みんなボーナス袋をこっそり見ようと、トイレに駆け込むのだが、それも同じように繰り返され、邪魔される。ところが老社員の坂本武が不当解雇されたことに岡田時彦は一人果敢に抗議して、社長と喧嘩して解雇されてしまうのだ。社長室で、社長の動作を岡田時彦がいちいち真似をする演出がここでも使われている。社長が小突くと、岡田時彦も社長を同じように小突いてしまい、「そんな暴力社員はいらない」と言われてしまうのだ。

失業し、ボーナスで自転車を買う子供との約束を果たせず、子供は泣き喚く。仕事が見つからない中で、今度は姉がお腹を壊して病気になり、その入院代も払えない。妻の着物を売り払って、なんとかしのぐ家族。貧しくても仲良き家族。手合わせ歌を家族4人でするのだった。そんなとき、職安所でかつての体育教師(斎藤達雄)と再会し、彼が始めた食堂カロリー軒を手伝うことになる。街頭で幟のような旗を持って、チラシ配りをするチンドン屋のような恥ずかしい恰好を妻にも見られ、彼のプライドもズタズタになる。店を宣伝してもらおうと、かつての同級生を食堂に集めて同窓会。みんなで寮歌を合唱する。そしてやっと彼の就職先が見つかった。栃木での英語の教師の口だが、「いつか東京に戻って来れるわよ」と妻は夫を励ますのであった。

アクションの反復がコメディとして何度も使われる。そして家族の手合わせ歌や同級生の合唱など、みんなで同調することの救いが描かれ、後の小津映画でも定番となっていく。


1931年製作/90分/日本
配給:松竹

監督:小津安二郎
原作:北村小松
脚本:野田高梧
撮影:茂原英雄
キャスト:岡田時彦、八雲恵美子、斎藤達雄、飯田蝶子、坂本武、高峰秀子
☆☆☆3
(C)1931松竹株式会社
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