アメリカ出身の映画監督のジョセフ・ロージーが1943年にMGMと監督の契約を結ぶ。そして1948年にRKOの『緑色の髪の少年』で長編劇映画の監督デビューした。赤狩りでアメリカ映画界を追われイギリスに亡命する前の作品である。
ある街の警察に、つるつるの坊主頭の少年が保護された。係官の訊問に一言も答えぬ少年。児童心理学の権威エヴァンス博士(ロバート・ライアン)の応待でかたくなな少年の口は開かれ、信じられない物語が語られていく。少年ピーター(ディーン・ストックウェル)はロンドンの富裕な家庭に生れたが、今次大戦の戦火はロンドンを襲い、疎開先で彼の両親からの音信が絶え、彼はアメリカ人の芸人(パット・オブライエン)にともなわれて渡米する。その芸人はおじいさんと呼ばれている好人物で、ピーターを可愛がって育てた。
学校に入って美しい女教師ブランド先生(バーバラ・ヘイル)や級友たちと仲良く遊ぶうちに両親の居ない淋しさも忘れる。だが学校で催された世界の戦災孤児救援のための衣服供出が行なわれた日、自分もまた戦災孤児で、両親が死んでいることが判ってしまう。悲しさの余り彼の頭は戦争の恐怖で一杯になる。そして翌朝、彼の頭髪は一夜にして鮮やかな緑色に変わってしまっていたのだ。
なぜ緑色だったのかは判らない。春の色、美しい植物の色。しかし、緑色の髪なんて誰もいない。級友からは苛められ、周りからも好奇の目で見られ、学校にも行けなくなるピーター。緑色の髪は伝染するだとか、水や牛乳の影響だとか街でいろんな噂を立てられる。そして泣きながらピーターが森に迷い込むと、戦争孤児のポスターに出ていた子どもたちがいた。幻想の戦争孤児の子どもたちから、「緑の髪は美しい。その緑の髪には意味があるんだ。戦争がどんなに非道いものかを世界に知らせるために髪が緑になったんだ」と教えられる。ピーターは街の人々に必死に戦争の悲惨さを伝えるが、相手にされない。再び森に来たピーターは、級友たちにハサミで髪を切られそうになり逃げ回る。しかし結局自らの意志で髪を切る決意をしたピーター。希望を失い、皆が見守る中で床屋で髪を切る。そして坊主になったピーターは、家出をしてきたのだ。ピーターの数奇な物語を聞き終わったエヴァンス博士は、おじいさんにピーターを引き渡し、おじいさんは亡くなったピーターの両親の手紙を読む。「精一杯生きれば、死は悲しむべきものではない。戦争で生き残った人々は、私たち戦死者のことを忘れないで欲しい。」と。精一杯生きて死んでいった両親、そしてたくさんの戦争の犠牲者たちと、今があることをピーターは知るのだった。
どこにでもある異端の排除の物語。そして戦争の恐怖と孤独。マジックをして人を驚かすおじいさん(パット・オブライエン)は、「暗いところでしか見えないものもある。」とか「目を閉じるなよ。よく見てろ。」とピーターに言う。そして森の中にいる幻想の戦争孤児たち。見えるものだけで判断すべきではない。死者たちを信じろ、そして忘れるな、という映画だ。
1949年製作/82分/アメリカ
原題または英題:The Boy With Green Hair
配給:セントラル
監督:ジョセフ・ロージー
脚色:ベン・バーズマン、アルフレッド・ルイス・レビット
原作:ベッツィ・ビートン
製作:スティーブン・エイムス
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽監督:C・バカライニコフ
音楽:Ray Harline
キャスト:ディーン・ストックウェル、パット・オブライエン、ロバート・ライアン、バーバラ・ヘイル、lリチャード・ライオン、ウォルター・キャトレット、サミュエル・S・ハインズ、レジス・トゥーミイ、チャールズ・メレディス
☆☆☆3

ブレーントラスト
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