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2025年05月05日21:01

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「按摩と女」清水宏〜山あいの温泉でほっとするような映画〜

清水宏監督作はまったく見ていなかったので、有名なこの作品を視聴。2008年に石井克人監督、草��剛主演で『山のあなた〜徳市の恋〜』としてリメイクされたが未見。

山あいの温泉場へ向かって按摩の二人が歩いている。徳市(徳大寺伸)と福市(日守新一)の漫才のようなかけ合い。「温泉は青葉の頃に限るよ」「良い景色だ。まるで、見えるようだ」。「陽が明るいうちに着きたいね」「陽が有ろうが無かろうが、めくらにゃ関係ないじゃないか。どうせ年がら年中夜道ばかりだ」・・・。そんな可笑しいテンポのいい二人の会話を長い移動撮影で映し続ける。めくらの按摩が「目あきを今日は何人追い越したか?」なんて二人で話している。按摩は負けず嫌いの健脚らしい。今日追い越せなかった学生たちのことを悔やんでいる。そこに馬車が通る。乗っているのは美しい女と男と子供だ。盲目ながら、「あれは東京から来た客だね」などと言い当てる。

東京から来た女の高峰三枝子は美しく、ワケあり風だ。いつまでいるのか、どこかへ行くのか、自分でもハッキリ言わない。そこへ宿屋で盗難事件が起きる。男4人の学生たちが、共同浴場へ行った隙に金を盗まれたのだ。そのとき宿屋に残っていたのは、高峰三枝子だけ。按摩は女のことを疑う。カメラはボケ感のある映像で、温泉街で振り向く高峰三枝子を撮る。モデルのようだ。あるいは、宿の雨傘を持ちながら橋を渡るショットは、現代のミュージックビデオのようにスタイリッシュで美しい。うつむき加減の彼女の目線、物憂い表情。

謎の女は、東京から来ていた少年の相手をしたり、その叔父である男(佐分利信)と会話をしたり、そして按摩の徳市(徳大寺伸)の相手をしたりと、何を考えているのか分からない。そして少年と男たちの気を引き惑わすのだ。女は按摩の徳市を指名しておきながら、フラリと宿から出て行く。目が見えない徳市だが、女とすれ違うとその気配で分かる。なぜ女は部屋から出て行ったのか、徳市は不思議でならない。女は川で子供の相手をして按摩を待たせたりする。子供の両親は亡くなったらしく、叔父である男が面倒を見ることになったという話を女は叔父である男から聞く。男(佐分利信)は独身で、女に興味を持つ。東京に帰ると言いながら、女と何か始まるかもしれないと期待しつつ、東京へ帰る日を一日ずつ延ばしている。子供は女と一緒にいたりするが、女が叔父さんと話に夢中になると、「つまらないや」と言って、今度は按摩と遊ぶのだ。按摩と子供が川で泳ごうとしたら、女が橋を渡っていて、按摩は川で泳ぐのを止めて、今度は女と話し始める。子供は「誰と遊んだらいいんだ?もう東京へ帰ろう」と叔父を促すが、叔父は女のことが気になって、ハッキリしない。しかし、ついに叔父も女のことを諦め、馬車に乗って東京へ帰っていくのだった。

そんなとき、宿屋の窃盗騒ぎが続発し、警察は宿屋の客を調べ始める。徳市は、女が窃盗の犯人だと確信しており、これはマズいと思い、女を旅館から逃がそうとする。裸足のままの女を按摩は連れ出す。「見えない私だから、分かるんです。捕まりますから、遠くへ行ってください」と徳市は女に言うが、どうやら勘違いだったらしい。女は東京の旦那から逃げてきたのだ。旦那が自分を捕まえに来るといつもビクビクしていたと言うのだ。勘が働く按摩だったが、謎の女に惚れて、窃盗犯だと勘違いした按摩と女の物語。

川があって、山あい深い温泉宿の風情がいい。昔から馴染みの温泉宿と按摩の関係。学生たちの足を按摩が強く揉みすぎて、翌日歩けなくなる男たちを女子学生たちが軽やかに追い抜いていく。コメディ風な演出。かと思うと、按摩が男たちとぶつかって喧嘩したり、川で泳いだり、健脚で人を追い越したしたりする負けず嫌いが面白い。「着物が裏返し」と言って、川で泳ごうとしていた按摩の着物を女が着せるシーン、謎の女は窃盗犯なのか?優しい女なのか?女は按摩を惑わせるのだ。なんという物語も起きないが、山あいの温泉でホットするような映画だ。


1938年製作/66分/日本
配給:松竹

監督・脚本:清水宏
撮影:斎藤正夫
音楽:伊藤宜二
キャスト:高峰三枝子、徳大寺伸、日守新一、佐分利信、爆弾小僧
☆☆☆3

コピーライト1938松竹株式会社
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