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2025年04月21日20:17

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『好人好日』渋谷実〜笠智衆がコミカルに変人の数学教授を生き生きと演じる〜

マイミクのnaoさんからススメられた日本映画のコメディ。

渋谷実監督とは、松竹に入社し、成瀬巳喜男、五所平之助、小津安二郎の助監督を経験、松竹蒲田らしいメロドラマに乾いた笑いを取り込んだ作品を次々と発表した監督として知られる。「存命中は小津安二郎、木下惠介に並び称される高い観客動員力を誇った。」と言われている。

この映画で大学の数学教授を演じる笠智衆も、小津安二郎映画と違ってコミカルに楽しそうに演じている。小津映画のおける笠智衆は演じるのを禁じられたロボットのようであるが、この作品の笠智衆は、軽やかに近所のミルク・ホールのお兄ちゃんとボクシングに興じてカウンターを食らって倒れたり、天皇からもらった文化勲章を盗まれても、その泥棒を通報せずに逃がしてしまったり、数学以外の俗世間のことは全くの無関心な変人・奇人を演じている。ウサギを突然もらってきたり、戦争孤児の娘を寺からもらってきて、いきなり妻の淡島千景に「自分の子供と思って育てよ!」と言うような男だ。そんな事情でもらわれて育てられた岩下志麻がこれまた明るく溌剌としていて可愛らしい。数学しか興味のない夫のために、生活費を切り詰めて支えてきた淡島千景も、恨みを言うでもなく、下戸の笠智衆とは逆に酒が大好きで、屈託のない明るい妻を演じている。

岩下志麻が恋人の川津祐介と結婚したいということをめぐっての家族の騒動と、文化勲章をもらいに東京まで行って泥棒(三木のり平)に盗まれてしまう騒動などをコミカルに描いている。街が見渡せる丘と青空、寺の鐘の音などが効果的に入る。東京で淡島千景が同級生の高峰三枝子の料亭で酒を飲みながら夫の愚痴をお喋りしている場面でも、いないと思われた笠智衆がカメラがパンすると奥の部屋に一人でいて、突然唄を歌い出す場面なども、笠智衆の変人ぶりを描く演出として面白い。名誉や世間体や体面など気にすることなく、好きなように自由に生きる笠智衆の描かれ方がホッとさせる。最後は戦争で勲章をもらって威張り散らす右翼的なオヤジが現れ、泥棒が改心して電車賃を払って東京から奈良まで勲章を返しに来るエピソードとともに微笑ましい。安心して楽しめるホームドラマだ。


1961年製作/88分/日本
配給:松竹

監督:渋谷実
脚色:松山善三、渋谷実
原作:中野実
製作:佐々木孟
撮影:長岡博之
美術:浜田辰雄
音楽:黛敏郎
録音:大村三郎
照明:小泉喜代司
編集:杉原よ志
キャスト:笠智衆、淡島千景、岩下志麻、川津祐介、乙羽信子、北林谷栄、高峰三枝子、織田政雄、小川虎之助、三木のり平
☆☆☆☆4

コピーライト1961松竹株式会社
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